第213夜:こんなところに伊太郎が…
第二次こけしブームの頃にこけしを集めていた収集家の方々が高齢になって亡くなったり、こけしの整理を始めたりして、ヤフオクに纏まった本数のこけしが出てくるようになった。先だっても、3寸ほどのこけしが5本纏めて出品されていた。その内の4本はブーム時の見慣れたこけしであったが真ん中の1本はかなり古いものであり、どうやら津軽系の伊太郎のもののようであった。普通に考えたらあり得ないような組み合わせの出品であったが、伊太郎を入手するチャンスでもあり、入札に参加した。今夜はそのこけしを紹介したい。口絵写真はその伊太郎こけしの表情である。
こちらが、ヤフオクに出品された時の写真である。3寸~3寸5分のこけし5本であるが、この中に伊太郎こけしがあること自体、我々には考えられないことであった。
明治2年生まれの佐藤伊太郎は、昭和7,8年頃、木村弦三氏の勧めにより、こけしを作り始めたという。伊太郎のこけしはそれから9年頃までの限られた期間に作られたもので、8寸前後と3寸程のものが多く残っている。「木の花」によれば、伊太郎こけしはその筆致の違いから、筆の細いものと太いもの(2種)の3タイプに分かれるようだ。筆の細いタイプは幸兵衛の筆致に近いといわれ、それぞれ(A)、(B)、(C)と区分している。「こけし鑑賞」には3本の幸兵衛こけしが載っており、左から(B)、(A)、(C)のタイプとなる。
こちらが今回のこけしである。大きさは3寸。ずんぐりとした胴に茶(赤)と紫のロクロ線が上下に入っている伊太郎の標準的な模様である。頭はやや横広きみで黒頭の部分が大きく前髪もかなり下がっているため、顔の面積は余計に横に広い。眉はやや太め、紡錘型の目で眼点は縦長で前を向いた視線は強い。特に向かって左目は眼点が下瞼からはみ出て迫力がある。撥形の鼻は大きく、二筆の口は中が赤く塗られている。小寸ながら古津軽のこけしが持っている泥臭いが凄みのある呪術的な風情を存分に漂わせているこけしであり、存在感は強い。本伊太郎こけしの表情は「こけし鑑賞」の左の作とよく似ており、(B)タイプに入るだろう。
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