第220夜:打ち出の小槌(2)
こけし千夜一夜物語(1)の第220夜で、阿部正義さんの打ち出の小槌を紹介した。その時の小槌は玩友からの借り物であった。先月の友の会の入札に同様の小槌が出品され、ようやく手元に置く事が出来る様になった。丁度220夜が近づいていたこともあり、同じ220夜で紹介することにした。師匠の小林清次郎さんが木地細工物を得意にしていた影響か息子の清さん、弟子の阿部正義さんとも極小木地玩具を超絶技術で製作する。このような技術もしっかりと後世に引き継がれて欲しいものである。口絵写真は、その小槌の頭に付いているダルマである。
こちらが、打ち出の小槌の全体像。全長約30cm、小槌の本体部分は長さ12cm、径7.5cmの円筒で、この中に各種の小物玩具が入っている。頭に付いているダルマは回るようになっている。千夜一夜(1)で紹介したものでは、握り手の部分も外せるようになっていた気がするが、本品では接着されていて外せない。
筒の中に入っている物も出して並べてみた。小寸(1寸6分)のこけし3本と闇夜、小えじこ、大小のガラス瓶、ダルマとこけしが描かれた楊枝2本である。
そして、小えじこの中には、豆こけし(1寸1分が3本、8分が2本、6分が3本)、独楽4いる個、顔の描かれた円板2枚、壺、青鬼(怒顔)、赤鬼(泣顔)、赤ダルマ4個、白ダルマ5個が入っている。
また、ガラス小瓶は大3.5cm、小2.5cmで、大瓶には極豆こけしが5本、小瓶には紅白の極豆ダルマと極豆独楽がぎっしりと入っている。
そして、これらの小物玩具には独楽を除いて全てに「山形 正義」の署名もされているのである。その精緻さには、ただただ感嘆するのみである。
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阿部正義さんの打出の小槌の蓋が開かなくなり、木工所に持って行きましたが断られたので、直接正義さんに連絡の上で、打ち出の小槌を送り、2週間前に直って送り返して戴きました。蓋が15年振りに開いて良かったです。正義さんはよくこんな小さなこけしやダルマを作ったものだと、そして久しぶりに自分が作った玩具を見たと自ら感激しておりました。現在は目が悪くなり、こけし玩具は一切作っていないとのことで、畑と田んぼの仕事をして元気で過ごしているようです。今後蓋がゆるくなったときはボンドを使い、充分乾かしてから閉じるようにとアドバイスを受けました。当時は拡大鏡付き眼鏡などなかったのに良く作ったものだと感心しております。
投稿: 年金生活者 | 2017年10月25日 (水) 15時11分
年金生活者様
本項の正義さんの小槌の蓋もきっちり出来ており、かなり力を入れて回さないと外れませんでした。嵌め物はその辺りが難しいところで、年と共に木地が変形して開かなくなったり、緩くて簡単に外れてしまうこともあるようですね。無事に開くようになって良かったですね。正義さんもお元気とのこと何よりです。今の工人はこんなに手間のかかる物は作らない(作れない)ようですが、こういう細工物にもどんどん挑戦して欲しいですね。
投稿: 国恵 | 2017年10月26日 (木) 13時59分