第236夜:戦前の広三(2)
山形系の奥山広三のこけしは好きなこけしの一つなので、製作時期が違うものがあると出来るだけ入手してきた。先ずは戦後作から集め始め、ようやく戦前作に辿り着いて、千夜一夜(1)の第820夜で紹介した。先日、更に古そうな広三をヤフオクで見つけ入手することができた。今夜はその広三こけしを紹介しよう。口写真は広三こけしの横顔である。
先ずは戦前の広三こけし2本を比較のため並べてみた。左が第820夜で紹介した昭和18年作、右が本項のこけしである。大きさは、左の広三よりやや大きく、尺2分である。胴底には名前と35才と年齢の記載がある。明治38年生まれの広三は数え歳だと昭和15年ということになる。戦前の広三は昭和14年に復活して70本程作り、あとは17,8年頃に作ったと言われているが、その間の15年頃にも作ったのだろうか。頭は角ばった縦長で胴は細くノッポのこけしという印象である。胴上下の赤ロクロ線は3本で左の広三より1本ずつ多く、その分、胴の白木地部は少ない。胴に散らした小花は花の花弁が上下の2筆で描かれているように見え、左の3筆描きとは異なる。また、緑の葉も花弁と同様2筆描きで茎もはっきりしており、左よりも写実的な描彩である。胴下部の左右に描かれる柵模様も、本項作は大きな井桁であり、左作よりも縦線が1本少ない。
次の表情を見てみよう。左作は、眉目の湾曲は少なく、細い筆で筆致は鋭い。一方の本作では眉目の湾曲は大きく、筆も太くゆったりとしていて、眼点も大きくおっとりとした表情になっている。2,3年の間に表情が大きく変化したのが分かるが、その間に何かあったのだろうか…。
« 第235夜:匠の技(佐藤春二) | トップページ | 第237夜:友の会12月例会(H29) »
「山形系」カテゴリの記事
- 第701夜:第23回紅花の山形路物産と観光展(2024.05.23)
- 第676夜:元日の落穂拾い(清次郎)(2024.01.09)
- 第670夜:2024年新春!(2024.01.01)
- 第664夜:久し振りの米沢…(2023.12.20)
- 第569夜:折り紙付きのこけし(吉太郎)(2022.03.23)
「古品」カテゴリの記事
- 第723夜:高橋林平のこけし(2)(2024.11.21)
- 第721夜:佐藤友晴のこけし(2024.11.17)
- 第718夜:大寸の治助こけし(2024.10.07)
- 第715夜:太治郎か…?(祝! 大谷50-50達成!)(2024.09.20)
- 第714夜:虹色の文助こけし(2024.09.19)
「全て」カテゴリの記事
- 第724夜:友の会11月例会(R6)(2024.11.30)
- 第723夜:高橋林平のこけし(2)(2024.11.21)
- 第722夜:山形・宮城展(2024.11.19)
- 第721夜:佐藤友晴のこけし(2024.11.17)
- 第720夜:友の会10月例会(R6)(2024.11.03)
コメント