第239夜:佐藤(朝倉)英次のこけし(戦前)
今年も余すところ一週間となった。この1年間に我が国恵志堂コレクションには多くのこけしが仲間入りをしてきた。その中でタイミングが悪くて未だ紹介していないこけしを残る期間で紹介していこう。今夜は佐藤(朝倉)英次の戦前のこけしである。英次は大正12年から北岡木工所で木地修業を始め、佐藤(大原)正吉と一緒に主に玩具類を挽いたという。その後、昭和6年に応召し、7年には除隊となって木地業に戻ったが、翌8年には上京して転業してしまった。従って、英次の戦前のこけしは大正末から昭和8年までということになる。口絵写真は、その英次こけしの表情である。
こちらがそのこけしである。大きさは左(一側目)が6寸7分で右(二側目)が5寸である。左のこけしの底には「佐藤英吉」との書き込みがあり、当時、英次と正吉のこけしが混同されていた状況が伺われる。戦前の英次こけしには一側目と二側目の2種類があるが、それらが同時期に作られていたのか、製作時期が異なるのかは興味深い。但し、深沢コレクションにある大正末の作は一側目である。
こちらは、両者を横から見たところ。この2本を比べて見ると、胴、特に肩の張りに違いがあり、製作時期は異なるのかも知れない。
こちらは、頭部の描彩を比べたもの。左では前髪の後には青点が一つだけで、そこから後方に手絡の赤線が伸びている。一方右では、前髪の後に赤点と青点の2点があり、そこから放射状に赤い手絡が伸びている。前髪、鬢とも左は細く、右は太くなっている。また、手絡線の数も右の方が多くなっている。このような描彩様式から、製作時期は右の方がやや後と思われる。なお、「愛玩鼓楽」には同手の2本が載っており、左は昭和3年、右は5年となっている。
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