第242夜:新山享のこけし
ここ2回は弥治郎系新山家のこけしを取り上げて来た。新山家は弥治郎系を代表する重要な家系であるが、最近では福太郎を継承する吉紀・真由美工人が活躍する一方で、久治直系の久志の後継者たちは陰の薄い存在となってしまった。かく言う国恵も久治・久志のこけしはある程度所蔵しているものの、その息子である久城・慶志・享のこけしとなると友の会のおみやげこけし程度しか記憶にない。そんな中で目に付いたこけしがあったので紹介したい。新山享のこけしである。口絵写真は、その表情である。
こちらが享こけしの全体像である。大きさは8寸。ヤフオクに出品されたもので、千円の最低価で他に応札者はなく国恵志堂にやってきた。伊勢こけし会頒布品のラベルが貼ってあり、「59-11」の書き込みから昭和59年の作であろう。部分的に木地のシミが出ているが、保存状態は概ね良好である。享は昭和28年生れで久志の5男。高校卒業後運転手をしていたが26歳の時に帰郷して家を継いだ。従って、このこけしは木地業に就いてから4年程経った頃の作である。木地形態は昭和40年代以降に久志が作っていたもので、胴の括れは少なくスラっとした現代的なものである。裾の3本の赤線もほぼ平行に描かれている。このこけしの一番の見どころは表情であろう。眉・目の描線は力強く勢いがあり、集中度の強い表情をしている。他の享作をあまり見た事がないため何とも言えないが、伊勢こけし会の頒布品ということで、時に力を入れて作ったのかも知れない。定寸享の代表作と言っても良いであろう。中古品の中から、このような良品を探し出すのも、こけし収集の醍醐味と言えるだろう。
今日は、12月30日。あと2日で平成30年を迎える。
この1年間、本千夜一夜物語(2)をご覧頂き、ありがとうございました。
良いお年をお迎えください…。
« 第241夜:新山家の戦前のペッケ(久志と茂) | トップページ | 第243夜:2018年元旦(守正さん追悼) »
「弥治郎系」カテゴリの記事
- 第582夜:日の丸丹頂…(栄五郎)(2022.07.21)
- 第572夜:栄五郎の逸品!(2022.05.14)
- 第568夜:新山勝祥のこけし(2022.03.17)
- 第563夜:高橋精志の精助型(2)(2022.02.03)
- 第551夜:久し振りの友の会例会(R3年11月)(2021.11.29)
「全て」カテゴリの記事
- 第631夜:弘道の42年這子写し(2023.05.21)
- 第630夜:善作のこけし(古型)(2023.05.12)
- 第629夜:笹森さんの近作(2023.05.05)
- 第628夜:笹森さんの伊太郎写し(2)(2023.05.03)
今年も一年間、面白くて為になるお話をありがとうございました、どうか良いお年を・・。
投稿: 益子 高 | 2017年12月30日 (土) 21時02分
益子 高さま
ありがとうございます。
来年もよろしくお願いいたします。
投稿: 国恵 | 2017年12月30日 (土) 21時33分