第246夜:小林英一のこけし
岩手県湯田温泉で作られてきたこけしは「湯田こけし」として独特の味わいを醸し出して我々を惹きつける。特に戦前の作品にはその傾向が強いようだ。湯田のこけしは、大正10年に丑蔵が木地講習会の講師として湯田にやってきたことから始まる。その後、丑蔵は小林辻右衛門が経営していた小林木工所に留まって木地挽きの指導を行い、多くの弟子を養成し、こけしも沢山作った。この時期の丑蔵のこけしとその弟子たちが作ったこけしが湯田こけしということになる。辻右衛門はこけしは作らず、その二男の英一が丑蔵の弟子となってこけしを作ったが、昭和22年10月に31歳の若さで亡くなってしまった。今夜は最近入手した英一のこけしを紹介しよう。口絵写真はその表情である。
こちらが英一こけしである。大きさは6寸2分。胴底に「昭和16年3月9日」との書き込みがある。英一は昭和8年から12年まで(第1期)郵便局に勤める傍らこけし等の木地製品を作ったが、13年から16年までは湯田を出て転職していた。16年に湯田に戻り、18年まで(第2期)はこけしも作ったが、その後病に倒れ病没した。従って、本項のこけしは第2期初期のこけしということになる。丑蔵の古作(フランケン等)に見られる肩のこけた木地形態で、胴には赤、緑、紫の細いロクロ線を密に描いて濃厚な雰囲気を持っている。表情は丑蔵の笑顔を写したものであるが、若々しさも感じられる。
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