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第253夜:鉄則さんの長おぼこ型

Tetunori_oboko_s36_kao

毎日期待しながら観戦しているカーリング女子。今日勝てば決勝トーナメントに進出だったが英国に逆転負け。明日の最終スイス戦に決定が延びてしまった。何とか勝って貰いたい。さて、津軽系の奥瀬鉄則さんは昭和34年頃からこけしを作っているが、「こけし辞典」によれば『40年ころまでは髷付長おぼこ型や幸兵衛型等を作っており…」とある。そこで、今夜はあまり注目されることの無い髷付長おぼこ型に焦点を当てて見てみたいと思う。口絵写真は長おぼこ型の表情である。

津軽系は盛秀太郎が開祖のように言われているが、もともと津軽の木地業として「木おぼこ(大鰐)」や「長おぼこ(温湯)」と呼ばれるものが存在していたとされる。しかしその実態は明確ではないようだ。鉄則さんが何を参考にしてこの「髷付長おぼこ型」を作り出したのか筆者には分からない。

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こちらが、髷付長おぼこ型と言われるものと思われる。大きさは8寸1分。作り付けの直胴で角張った縦長の頭には平たい髷が付いている。胴上下には赤・紫・緑の細線と太線を組み合わせたロクロ線を引いている。その間の中央部には大きな牡丹の花を楷書体できっちりと描いている。面描では、頭髪の下端から顎下まで長い鬢を描いている。眉は細く、長めの上瞼の下に大きめの眼点を塗りつぶしている。鼻は長い垂れ鼻で、口は二筆の墨の間に紅を入れている。やや笑みを浮かべた端正な表情は隙が無いが、津軽系の素朴さ・泥臭さとは異なり面白みに欠ける面は否めない。しかしこけしとしての完成度は高いと言えるだろう。

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髷付長おぼこの経年変化を見てみよう。左端は本項のこけしで昭和36年頃。左から2本目は37年8月、頭が丸くなり頭頂部の髷は薄くなった。鬢が短くなり、眉・目・鼻・口が顔の上部に寄り鼻は短くなった。胴上下のロクロ線の幅が細くなり緑が無くなった。牡丹の花がやや写実的になってきた。これらは幸兵衛型の影響かも知れない。3本目は昭和41年12月、頭は更に丸く下膨れ気味になった。目は上瞼が長く湾曲が大きくなり、下瞼を描いてその間に眼点を入れている。目・鼻・口が中央に寄ってコケティッシュな表情になっている。右は58年11月、下膨れ感はやや少なくなった。目が左右に離れたので落ち着いた表情になっている。胴中央部に赤2本のロクロ線が入っている。昭和30年代から50年代末にかけて、髷付長おぼこ型が大きく変化しているのが見て取れる。なお、この型の最初期は通称ロボットと言われる独特のものであり、入手の機会を待っているところである。

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