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第258夜:明太郎のこけし

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今日21日は春分の日。2日前には当地横浜でも桜が開花した。例年より1週間ほど早い開花であった。ところが今日は一転しての冬模様、朝から雪が舞い始め、昼過ぎには民家の屋根が白く染まっていった。さて、津軽系の間宮明太郎のこけしはこれまであまり注目しないまま今に至っている。最も素朴で原始的なこけしのひとつと評されているが今一つピンとこなかった。ところが先日ヤフオクに出品された明太郎こけしの表情は今までの概念を覆させるものであった。口絵写真は明太郎こけしの表情をやや上方から眺めたものである。

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3月21日の昼過ぎの横浜の状況。自宅のベランダから外を望む…。

Meitaro_senzen_2men

さて、こちらが今回手にした明太郎こけしである。童宝舎のコレクション図集(その七)の29頁に掲載の現品である。大きさは1尺2分。胴底には「間宮明太郎 16.3」の書き込みがあるが、図集の解説では昭和8年頃とある。

明太郎は木村弦三氏の依頼により初和初期からこけしを作り始めたと云う。弦三こけしの写真を見ると幾つかの種類があるようだが、中でも瞳の無い白目のこけしは大鰐こけしの祖型と言われる「木おぼこ」を連想させるものである。本項のこけしもそれに含まれるものであろう。胴は直胴のように見えるが、赤と紫で引かれたロクロ線の部分は肩、胴中央部、裾はやや膨らんでいる。肩は丸くなっており、単調さを補うためか首のところに段が作られている。胴には色は塗られていないようである。

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顔の部分を詳しく見てみよう。丸い頭部は黒頭(オカッパ)になっており、髪先は分かれていて、特に前髪の先は1本1本細かく毛描きされている。眉と鼻は筆太にしっかり描かれているが、目は中程の太さの筆で丸く描かれ、瞳の無い白目だけである。口も中程の太さの筆で黒く輪郭を描き、中に紅を入れている。瞳の無い目は意味のない虚ろな表情に見えそうだが太い眉・鼻との位置関係が絶秒で、写実的な口も相まって幼子の無邪気な表情に見えるから不思議である。特に向かって左目は丸い筆跡の上部がちょっと太くなって、偶然にそこが微かな瞳のようにも見えて表情に味わいを添えている。

こけしは人形の一種で表情の玩具であるが、このような作品を見せられると、その奥行きの深さを改めて認識を新たにさせられる・・・。

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