第262夜:ちょっと変わった太治郎こけし
今日から4月である。例年ならこれから花見の時期を迎えるのだが、暖かい日が続いた今年は関東でも既に桜吹雪から葉桜の季節を迎えつつある。そんな先月後半、ヤフオクに状態の良い古品数本を含む5本ほどを纏めた出品が数組あった。その内の1組を入手出来たので、順次紹介したいと思う。今夜は中でも気になっていた太治郎こけしである。口絵写真は、その太治郎の表情である。
こちらがその太治郎こけしである。大きさは9寸、胴底には「斎藤太治郎 71才作」と「昭和14年6月入手」の書き込みがある。この太治郎こけしでは3つの注目すべき点がある。1つは横広とも思える丸い頭、2つ目は胴中央部の3本の太い紫ロクロ線、そして3つ目は4段の波線である。太治郎こけしは大正期のものに頭の丸いものがあるが、以降は概ね縦長のものが多いようで、この丸い頭は珍しい。また、胴の3本の紫ロクロ線に関しては「木の花(第参拾号)」で昭和10年頃の特徴だとして、尺3寸(久松蔵)と9寸(中屋蔵)を掲載している。同寸の中屋蔵と比べると、頭の形の違いは明らかで、更に本項のこけしでは3本の紫ロクロ線の上部に赤の波線が3段入っていて、全体では4段になっている。太治郎の本型では、赤の波線は大寸でも3段であり、この4段は初めて見た。どうしてこのような模様にしたのか分からないが、やや窮屈なロクロ模様となっており、成功とは言えないのではないか・・・。
手持ちの尺3寸(左、「木の花」の尺3寸と同手)と並べてみた。頭の形と表情の違いは明らかであり、本項の太治郎が後年のものであることが分かる。表情的にも目の位置が下がって、甘い表情になっているが、丸い頭の形が幸いしてか「老女の厚化粧」にはならず、あどけない表情になっている。こうして並べてみるとまるで母親と幼女のようであり、微笑ましく眺められる。
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