第270夜:「是伸頒布会」第5回裏話
柿澤是伸さんから「是伸頒布会」の第5回、6回の作品が送られてきた。今回の頒布に関しては、一昨年(平成28年)の3月に是伸さんが「宮城の観光と物産展」出展で千葉そごうに来られた折に話をしたものであった。しかし同年6月に是隆さんが急逝され、頒布品の製作も遅れることになった。昨年7月に是伸さんから試作品が出来たとの連絡があり、それから電話とメールでのやり取りで修正箇所などを連絡し、今年3月の千葉そごうで作品を確認した。ここで最終的な細かい点の確認を行い、今回の頒布となった次第である。口絵写真は、第5回頒布の4寸たちこの表情である。
本「是伸頒布会」は、柿澤是伸さんに高橋盛を中心とした「高勘」の古作こけしの写しを作って貰い、それを頒布するのが目的である。その第1、2回では大正期の作を、第3,4回では昭和初期の作を復元して頂いた。今回(第5,6回)は盛の作品の中でも特異な橘頒布期(昭和7年)のこけしを対象にした。第5回の「原」は橘頒布のたちこ4寸である。
こちらの右端が「原」こけしである。左3本は試作品で、右から2番目は頒布品である。「原」は胴の反りの少ない細身の形態で、作り付の頭はこの時期の特徴であるやや横広である。試作品の段階では、胴の太さ具合、頭の形にはそれぞれ違いが見られる。これらを微調整しながら最終的に出来上がったのが、右から2番目の頒布品である。描彩では面描に特に注意してもらった。「原」のたちこでは、眉・目が下方にあるため額(オデコ)が広く、眉・目・鼻・口が中央に寄った強い表情である。是伸さんが普段作るたちこの表情は可憐で愛らしいものであるため、かなり意識的に描いて貰った。眉をもう少し下げて目と近づけるとオデコの感じがよく出たと思われるが、是伸さんも分かっていてもなかなかそこまでは出来なかったようだ。
この「原」の復元は平成23年に是隆さんにも作って貰っており、それは千夜一夜(1)第584夜で紹介している。この時は特に修正は加えて貰わなかったので、木地形態・描彩ともそれほど「原」に忠実という訳ではない。ただ、胴の楓の向かって右の2葉が一筆描きのようになっている点は忠実に復元されている。今回の是伸さんの写しではその点を指摘し忘れてしまい、左2葉と同様の描き方になっている。
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