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第279夜:春二の幸太型(初作?)梅雨明け

Haruji_kota_syosaku_kao

今週になってから梅雨の晴れ間が続いていると思ったら、昨日(29日)になって関東地方は梅雨明けが宣言された。6月中の梅雨明けは観測史上初だという。これから長く暑い夏が続くのであろうか…。さて、6月の友の会例会の入札品の中に佐藤春二の幸太型のこけしがあった。長く人気を保っていた春二のこけしも最近は勢いが無くなり、今回の幸太型も応札者は筆者一人という状況であった。幸太型は国恵志堂のコレクションアイテムの一つであり、今回の作も春二の初期の幸太型と思われたので入札に参加した次第。口絵写真はその表情である。

本項のこけしは武田利一氏旧蔵品で、胴底には「35年 たつみ開店」の書き込みがある。武田氏はこけし店「たつみ」発行の「こけしのささやき」NO.3に『たつみ繁盛記』なる文章を寄せている。「たつみ(第2次)」が板橋区の中宿に開店したのは昭和35年7月で、武田氏は「表紙には、熱塩の佐藤春二さんに復元させた、幸太型と茂吉型の二本を並べた写真が、カットに使われていた。」とある。従って、本項のこけしは「たつみ」開店時に頒布された幸太型(初作かそれに近い時期のもの)と思われる。

Haruji_kota_syosaku_2men

こちらがそのこけし。大きさは8寸2分。やや縦長の頭、肩には段があり頭は嵌め込みで、きついが回すことができる。胴はやや太目で中程から裾にかけて膨らんでいる。胴下部に2本の浅い鉋溝がある。胴下部のロクロ模様は全部で10本で、上3本は細めである。配色はご覧の通りで赤、緑、紺(紫)の3色が使われている。春二の署名は無い。

Haruji_kota_syosaku_hikaku

他の幸太型と比べてみた。左から順に①、②、③、④とする。②は春二(S35.8月)。①とは一か月程しか違わないが、頭と胴の形、鉋溝、面描、ロクロ模様の配色などかなり変化(改良)している。頭はやや横広になり、胴は細くシャープになっている。鉋溝は細く深くなり、ロクロ模様には黄色が追加された。署名あり。③は佐藤辰雄(S37.10)。春二の幸太型を参考にして作ったのであろう。頭はやや小さめだが形は①に近い。胴は細めで肩の段は明瞭ではなく三角胴に近い。ロクロ模様は②の春二を元に上部の2本が細い線状になった。④は高田稔雄(H29.5)。これまで作られてきた各種の幸太型を参考にしたのであろう。頭は縦長で頭頂部が平ら、胴は直線的でシャープ。鉋溝は深く位置が高い。ロクロ模様は③を踏襲しているが、紫は①の春二と同じ紺色にしている。面描は高田さん独自の解釈で描いているようだ。

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最後に、幸太型の特徴の一つである頭頂部の描彩を比べて見よう。前髪の後から放射状に描かれる赤い手絡模様は、①では中央の1本が特に長く、全体では8本、左右一番外側の1本の先が内側に巻いているのが特徴である。②では、手絡は7本となり、外側の2本の内巻きは無い。③は②と同じ。④では手絡が大きく9本に増えている。

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鬢上に描かれる赤い渦巻き状の飾りも見てみよう。向かって右側の渦巻き状の鬢飾りは、①の春二のみ時計回りで他の3点は反時計回りになっている。

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左側の渦巻きは④の高田作のみ時計回りで、他の3点は反時計回りに描いている。

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