第284夜:郷玩時代のこけし(佐藤広喜)
梅雨明けの天候は晴天が続くのが恒例であるが、毎日最高気温の記録を更新するような酷暑が続くと、もう何をするのも億劫で、ともするとダラダラと一日を過ごしてしまう。これではイカンと気力を奮い起こして本ブログを掲載している。さて、今夜は郷玩時代のこけし第2回として佐藤広喜のこけしを取り上げる。明治34年に松之進の弟子となった広喜は大正に入ると北岡工場の仕事を一手に引き受ける様になり、弟子の養成にも力を入れた。大正10年には自宅に木地工場を建て、北岡の仕事を続けた。広喜のこけしは「郷土玩具(東の部)」で北岡仙吉名で紹介されている。角張った大きな頭に、筆力鋭い面描を描いた快作である。今夜はその当時の広喜こけしを眺めてみよう。口絵写真は広喜こけしの表情である。
こちらが、玉峰旧蔵の広喜こけしである。大きさは5寸7分。やや縦長の四角い頭に肩の張った胴で、上下に紫のロクロ線を2本ずつ引いている。この紫のロクロ線は北岡工場の標準規格の様で、佐藤正吉、佐藤英次、佐藤吉之助なども同様のロクロ線を引いている。面描では鬢は頭の真横に描かれ、正面からは見えない。切れ長の眉と目は接近し、丸鼻に二筆の紅口が愛らしい。大正から昭和初期あたりは、このような迫力のある表情を描いていたようだ。
さて、広喜のこの時期のこけしは従来あまり知られておらず、加藤文成コレクション(調布市郷土博物館)に見られるくらいであったが、3年程前に須賀川の業者から出品された大正期から昭和初期の極美古品の中で6点が出品された(第21夜参照)。その内の筆者蔵品と比べてみよう。
左が須賀川の広喜(6寸)で右が本項の広喜。須賀川の広喜の方が頭が横に広いようであるが、須賀川の他の5点の中には縦長の頭もあるので、時代差とは言えないかも知れない。ただ、面描の筆力は須賀川の方があるようだ。また、須賀川作のロクロ線(3点)は全て緑である。胴の添え葉は葉元が丸まった筆数の多い描法であるが、本項では3筆の簡単なものである。これは文成コレクションの広喜も同様である。鬢は本作(右)では2筆で簡単に描いているが、左では多筆で太く描かれている。
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