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第287夜:郷玩時代のこけし(斎藤太治郎)

Tajiro_taisyo_kao2

土湯の斎藤太治郎のこけしは国恵志堂の蒐集開始から目指していたコレクション・アイテムの一つである。そのコレクションの歴史は弘道から入り、その弘道のピーク期のこけし、そして師匠の佐藤正一のこけし、そしてようやく太治郎に辿り着いたのは蒐集開始から数十年が経っていた。太治郎でも目指すのは評価の高い大正期のこけしであったが、それが我が手元にやってくるなど思いも寄らなかった。大正期の太治郎が市場に出ることなど殆ど無かったからである。それが3年前に須賀川の業者がヤフオクに出した古作こけしの中に3本の大正期太治郎があり、終に太治郎(しかも保存極美)を我が手元で愛でることができたのである。こけし界には、1本名物級のこけしが手に入ると、それに引き寄せられるように同種のこけしが集まってくるという言い伝えがある。今回の玉峰コレクションの太治郎は正にそれなのかも知れない。今夜はその太治郎を紹介しよう。口絵写真はその太治郎の表情である。

大正期の太治郎こけしは、胴のロクロ線模様が昭和時代とは異なるため判定は分かり易い。赤波線と紫波線が2段ずつであり、胴下部の2本の紫ロクロ線の上に太い赤ロクロ線が2本入るのが大きな特徴である。尺級の大寸物だとこの模様では間が空き過ぎると思われるが、8寸以上の大きなものは見つかっていない。各種文献を調べると、この手の大正期と思われる太治郎は10本程で、それに須賀川の3本が加わり、今回玉峰の1本が加わったという事になる。

Tajiro_taisyo_2men_2

こちらが、本項の太治郎である。大きさは6寸4分。頭は縦横比が同じくらいでやや角ばっており、胴は首下が細く中央から裾にかけて膨らんでいる。顔の中ほどに小さな瞳、眉は太く大きく、顔の横幅まで広がった沢山の短い前髪が眉に接しそうである。蛇の目から顎まで伸びた鬢は雄大で一筆描きのカセが飾っている。首下には赤ロクロ線が1本、その下に緑のロクロ線が3本、そこから下に赤波線と紫波線が2段に並び、その下にやや太い赤ロクロ線が2本、更に太い紫ロクロ線と細い紫ロクロ線が胴下部を引き締め、畳付きまでの空白部も大きい。太治郎、大正中期の典型的な様式のこけしである。

須賀川の3本の胴模様は殆ど同じであるが、頭の形や胴の長さには違いが見られ、顔の表情もやや異なるようだ。木の花(30号)で取り上げられている①の太治郎は大正中期と思われ、頭の縦横の長さがほぼ同じで目の位置が高く、クリクリ目で若々しい表情である。本作もそれと表情はほぼ同じで愛らしい一品である。

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既に手元にある須賀川の太治郎(右)と並べてみた。木地形態、胴のロクロ線模様の様式などほぼ同一と言えるが、表情的には大きさも相まって、姉(右)と妹のように見える。2本並べてみて、右のこけしの保存の良さ(特に胴)がお分かり頂けると思う。

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