第287夜:郷玩時代のこけし(斎藤太治郎)
大正期の太治郎こけしは、胴のロクロ線模様が昭和時代とは異なるため判定は分かり易い。赤波線と紫波線が2段ずつであり、胴下部の2本の紫ロクロ線の上に太い赤ロクロ線が2本入るのが大きな特徴である。尺級の大寸物だとこの模様では間が空き過ぎると思われるが、8寸以上の大きなものは見つかっていない。各種文献を調べると、この手の大正期と思われる太治郎は10本程で、それに須賀川の3本が加わり、今回玉峰の1本が加わったという事になる。
こちらが、本項の太治郎である。大きさは6寸4分。頭は縦横比が同じくらいでやや角ばっており、胴は首下が細く中央から裾にかけて膨らんでいる。顔の中ほどに小さな瞳、眉は太く大きく、顔の横幅まで広がった沢山の短い前髪が眉に接しそうである。蛇の目から顎まで伸びた鬢は雄大で一筆描きのカセが飾っている。首下には赤ロクロ線が1本、その下に緑のロクロ線が3本、そこから下に赤波線と紫波線が2段に並び、その下にやや太い赤ロクロ線が2本、更に太い紫ロクロ線と細い紫ロクロ線が胴下部を引き締め、畳付きまでの空白部も大きい。太治郎、大正中期の典型的な様式のこけしである。
須賀川の3本の胴模様は殆ど同じであるが、頭の形や胴の長さには違いが見られ、顔の表情もやや異なるようだ。木の花(30号)で取り上げられている①の太治郎は大正中期と思われ、頭の縦横の長さがほぼ同じで目の位置が高く、クリクリ目で若々しい表情である。本作もそれと表情はほぼ同じで愛らしい一品である。
既に手元にある須賀川の太治郎(右)と並べてみた。木地形態、胴のロクロ線模様の様式などほぼ同一と言えるが、表情的には大きさも相まって、姉(右)と妹のように見える。2本並べてみて、右のこけしの保存の良さ(特に胴)がお分かり頂けると思う。
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