第281夜:高橋きくゑのこけし
6月の友の会例会、入札コーナーに行ってみると、高橋きくゑのこけしが並んでいた。他にも、小椋久四郎、高亀系の古品たちこ(武蔵か)、佐藤吉雄などの戦前作があって、懐具合が気になる豊作であった。高勘ラブの筆者の狙いは勿論きくゑで、古品はこれ1本に絞って入札した。久四郎などもあったお陰か、何とか落札できて胸を撫でおろした。大正5年に盛と結婚したきくゑは7人の子をもうけた一方で、早くから盛を助けてこけしの描彩を行い、こけし界に知られていた。口写真は、きくゑこけしの表情である。
こちらがそのこけし。大きさは6寸4分。Kokeshi Wikiに掲載されている西田記念館蔵のきくゑと同手のこけしである。従って昭和12年の作か。やや縦長の丸い頭に反りの少ない真っ直ぐな胴で、すらっとしたこけしに仕上がっている。左右に振り分けた前髪に3筆で長めの鬢を描き、眼点は上瞼から盛り上がってアクセントとなっている。女性らしいおっとりさを見せながらも芯の強い表情になっている。胴は上下に赤と緑でロクロ線を引き、肩上面も赤が塗られている。胴には黄色が塗られているようだ。胴模様は楓を二葉、上下をややずらして動きを与えている。
きくゑのこけしを2本並べて見た。左は旧ぽっぽ堂コレクションの6寸。同じ雰囲気を持ったこけしであるが、左では上瞼が短いため眼点が目立ったクリクリ目に見える。口は左は極小の赤点であるが、右では赤2点になっている。また、胴模様の楓が左では大胆に胴一杯に描かれているが、右ではやや小さめで丸みを帯び整った形になっている。
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