第289夜:正吾さんの慶一郎写し(友人追悼)
燃えるような酷暑で迎えた8月、とんでもない事が起こった。退職後も毎月会って懇親を深めていた会社時代からの同僚の家で火災が発生し、家は全焼し彼とその義理の母が亡くなってしまったのである。その前日も深夜までメールのやりとりをしていたのに・・・である。ニュースで聞くような事がいとも近しいところで起こったことに言葉もなく無力感が広がる。友のご冥福をお祈りしたい。さて、高橋正吾さんにお願いしていた秋山慶一郎の写しが届いたので紹介しようと思う。尺、8寸、6寸、4寸5分の4本をお願いしたが、今夜は尺の写しである。口絵写真はその表情である。
原こけしと写しを並べてみた。現こけし(中央)は昭和13年頃と思われる9寸5分(第216夜参照)で、胴には黄色は塗られていないように見えるが、比較するために白胴と黄胴の2種類を作って貰った。先ず、正吾さんがいつも作っている高亀系とは異なる慶一郎のどっしりとした形態を見事に再現してくれた。胴には中央下部に大きく開いた花弁の多い正面菊を描き、その上部に横菊を3輪配している。色彩的には黄胴の方が赤と緑が映えて鮮やかである。そして表情。アクセントの入った力強い眉、きりっとした目、赤と黒で点状に描かれた口も忠実に再現してくれた。独特の味わいから多くの愛好家に望まれながらも後継者の居なくなった慶一郎のこけしが、正吾さんによって再現されたのは喜ばしいことだ。
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