第301夜:戦後の久作こけし
9月の友の会例会入札では、弘道こけしの他にもう1本のこけしを入手した。佐々木久作の勘治型のこけしである。久作の戦後のこけしに勘治型があることは、伊勢こけし会だより(101号)の柴田長吉郎氏の記事と写真で知ってはいたが、見るのは今回が初めてであった。勘治型こけしは国恵志堂の主要なコレクションアイテムの一つであり、資料としても欲しいものであった。今夜はその勘治型を含め、戦後の久作こけしを採り上げてみたい。口絵写真は久作勘治型の表情である。
佐々木久作は高橋盛の秋田時代の弟子であり、戦前からこけしも作っている。伊勢こけし会だよりの柴田氏の記事「佐々木久作のこけし」によれば、戦後の久作こけしは橋本正明氏の依頼により遊佐福寿の木地に描彩したものが昭和42,3年頃に少数頒布されたとある。その後、柴田氏が久作を訪ね、滝島茂の木地に描彩を頼んで東京こけし友の会の例会で頒布した。また、柴田氏の情報から、湯沢駅前の民芸店「フミオ」が井川武松の木地に久作、子野日幸助、佐藤養作に描彩を依頼したこけしが売られたとある。
さて、こちらが本項の久作(勘治型)の全体像である。大きさは8寸。伊勢こけし会だよりの写真と比べて、井川武松木地のものと思われる。頭が縦に長く、肩の山の盛り上がりが大きいのが木地の特徴である。武松は鳴子系の工人ではないためか、木地は洗練されておらず武骨で玩具っぽい感じがする。
こちら(右)も武松木地の久作こけし。こちらは頭の形も均整のとれたものとなっている。描彩の筆致も異なることから、製作時期は左とは違うのであろう。なお、武松木地では、署名は胴底ではなく、胴裏下部に書かれている。
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