第298夜:弘道の新種発見!
あの酷暑が嘘のように涼しく、すっかり秋めいてしまった。やはり季節は動いているんだなあとしみじみ感じる今日この頃である。さて、先日ヤフオクに6寸の弘道のこけしが2本出ていた。1本は昭和34年後半と思われるもの、もう一本はあまり見慣れない表情のこけしである。34年後半のものは定評のある時期でもあり1万8千円を超える高値で落札された。もう1本のこけしはやや保存状態は良く無いがその十分の一にも満たない額で国恵の元にやってきた。弘道のこけしはその全期間のものを見てきたつもりでいたが、今回の弘道はそれらの中に当てはまらないもの。今夜はそのこけしを紹介したい。口絵写真はその表情である。
こちらがそのこけしである。弘道の太治郎本型である。大きさは6寸。胴に比べて頭が細身のこけしである。面描の筆致は太く、眉目の湾曲は大きく、おおらかで明るい表情のこけしである。このような表情の弘道は今まで見たことは無く、その製作時期が気にかかった。弘道のこけしは昭和51年頃を境に大きく変化しており、それ以降は太治郎の味わいからは大きく離れてしまう。本こけしはそれ以前のものと思われる。
その近辺と思われるこけしと並べてみた。右から昭和40年頃、本こけし、43年3月、45年3月。弘道は42年に大正期の太治郎を模した太治郎型を作っており、右から3番目のこけしは表情(特に目の描法)や胴模様の様式(波線、紫線が2段)がそれになっている。
こちらは上記4本の胴底の署名である。弘道は35年頃までは署名に製作年月日を記しており、それ以降も40年頃までは「福島土湯 斎藤弘道作」と書いている。しかし42年以降は「土湯 斎藤弘道作」となる。それに従うと、本こけしは40年以降のものと推測される。
次に面描を見てみよう。ポイントは前髪の描き方。43年以降になると所謂「悪魔の爪痕」と称せられるように1本1本の髪元が膨らんできて並びも均一ではなくなる。本作ではそれ以前の時期と同様に、滑らかで綺麗に揃った前髪になっている。
鬢も見てみよう。43年以降は、鬢の下端が細くなるのに対して、それ以前はほぼ同じ太さである。以上のような点から、本項のこけしは昭和41年頃の作ではないかと思われる。
昭和33、34年の「得も言われぬ微笑み」も34年後半から変化が現れ、35年頃からは平板な表情に変わっていく。それは40年頃まで続く。その弘道こけしに物足りなさを感じた橋本正明氏と箕輪新一氏が大正期の太治郎を目指した作の製作を勧めて、弘道のこけしは一変する。しかし、今回出てきた弘道こけしがその間に位置するとしたら、それは一体どういうことであろうか。橋本・箕輪両氏の働きかけで大正期太治郎を目指した過程の中で生まれたものなのであろうか。それとも、それよりも前に既にこのような溌溂としたこけしを作るようになっていたのであろうか。いずれにしても、この種の太治郎型はあまり作られず、42年の太治郎古型が脚光を浴びてしまったのであろう。しかし、本項の弘道こけしの表情は素晴らしく、少なくとも34年後半作と10倍の開きがあるようなものではないと言えるだろう。
昭和33、34年の「得も言われぬ微笑み」も34年後半から変化が現れ、35年頃からは平板な表情に変わっていく。それは40年頃まで続く。その弘道こけしに物足りなさを感じた橋本正明氏と箕輪新一氏が大正期の太治郎を目指した作の製作を勧めて、弘道のこけしは一変する。しかし、今回出てきた弘道こけしがその間に位置するとしたら、それは一体どういうことであろうか。橋本・箕輪両氏の働きかけで大正期太治郎を目指した過程の中で生まれたものなのであろうか。それとも、それよりも前に既にこのような溌溂としたこけしを作るようになっていたのであろうか。いずれにしても、この種の太治郎型はあまり作られず、42年の太治郎古型が脚光を浴びてしまったのであろう。しかし、本項の弘道こけしの表情は素晴らしく、少なくとも34年後半作と10倍の開きがあるようなものではないと言えるだろう。
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