第313夜:弘道の微笑み(S34年の変化)
今、斎藤弘道の昭和34年後半の作品がヤフオクに出ていて、結構な価格になっている。弘道のこけしは昭和33~34年頃のものが評価が高く人気もある。弘道LOVEの国恵志堂でもこの時期の作品には特に注意を持って眺めてきた。手作業で作るこけしであれば、全く同じように作っていても時の流れとともに変化は出てくるもので、34年作の署名のある作品でも前半と後半では細部に違いが出てきており、その微笑みから受ける印象も違ってくる。今夜はその辺りの所を見てみたい。口絵写真は、ひと月ほど前にヤフオクで入手した34年後半弘道の表情である。
こちらが先月入手した弘道の全体像。大きさは8寸、34年9月2日作の太治郎本型である。太治郎型は胴に赤と紫の波線の入った本型と赤ロクロ線の下部に黒の返しロクロが入った古型があるが、本型では胴の赤、緑、紫の鮮やかさが見所でもあり、その保存状態も重要である。幸いなことに土湯系こけしは胴が回せるので、状態の良い側面を前にすれば鑑賞上は殆ど支障はない。本作も前面は色彩完璧であるが裏面はやや薄くなっている。
さて、34年の変化ということで、前半の作と比べて見よう。本型と太子型で比べてみた。右の2本(1尺本型と6寸太子型)は34年2月6日作。左端の6寸太子型は9月29日作なので、左2本は9月作ということになる。右2本と左2本とで製作日に半年程の差がある訳である。全体的な感じでは胴がやや太くなったという程度の違いである。
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