第316夜:喜平の鯨目(戦前)
福島県飯坂温泉の渡辺喜平のこけし(特に戦前作)は好きなこけしの一つでもあり、本ブログでも何回か紹介してきた。喜平は正末昭初からこけしを作っていたようだが、確実に喜平作と言われるこけしは昭和16年以降のものであるようだ。その喜平のこけしには目の描法が異なる2種があり、一方は一側目で眼点が大きくて丸いドングリ目のもの、他方は鯖湖の鯨目である。これまでドングリ目のこけしは入手できていたが、鯨目には縁が無く、ようやく手にすることが出来たので紹介したい。口絵写真は鯨目こけしの表情である。
喜平のドングリ目と鯨目こけしの内、ドングリ目についてはその経緯がある程度推測でき、それは千夜一夜(1)の第320夜で紹介した。一方の鯨目についてはそのような経緯は分からず、愛好家の要望によりキンのこけしを参考にして描き始めたのではないかと考えている。
こちらが、本項のこけしである。大きさは7寸2分。木地形態はドングリ目と同様である。面描も目の描法以外は同一と言って良いだろう。肝心の鯨目は下瞼はほぼ水平、上瞼は目頭の盛り上がりが大きく、その分眼点も大きくなって明敏な表情になっている。キンの独特の味わいを持った鯨目とは別種の趣がある。長い象鼻と相まって喜平独自の雰囲気を持っている。なお、当初はドングリ目の胴はアヤメ、鯨目の胴は赤と黄のロクロ線と分けていたようだ。
その後の鯨目の変遷を見てみよう。右端は「古形子加々美」に掲載のドングリ目の作で昭和16年2月12日の記載がある。本項のこけし(右から2番目)は前髪の先が整っていないので右端よりやや前の作かも知れない。右から3本目は16年から17年頃か、目頭の丸味が減って目尻の湾曲が大きくなってキンの描法に近づいてきた。左から2本目は17年から18年頃か、目尻が下がって長く垂れる様になった。左端は21年頃、目鼻が中央に寄って表情は大きく変わってしまった。
同じこけしを横からも見てみよう。鬢の大きさも時期によってかなり変わっていくのが分かる。
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