第315夜:ヤフオクの拾い物(賢二郎)
今日から12月である。早いもので今年もあとひと月になってしまった。年初に計画したプランはまた来年に持ち越しとなりそうである。さて、Kさんより見せて貰ったもう1本のこけしを紹介しよう。初めて目にした時、その張りのある表情に好感をもったが、手の込んだ胴模様は初めて見るものであり誰の作かは思い当たらなかった。ヤフオクの出品が増えるにつれて、色々と面白いものも出てくるようになり、それはそれで楽しいものである。こういったこけしを安価に入手した楽しむのも、こけし蒐集の醍醐味の一つなのであろう。口絵写真は、そのこけしの表情である。
作者は胴底の書き込みから、仙台の「広井賢二郎」と分かったが、それが誰なのかは不明でkokeshi wikiで調べて、広井道顕、政昭兄弟の父親であることが分かった。賢二郎は明治26年の生れで江戸の木地師3代目にあたる。昭和20年に疎開で白石に行き、そこでこけしを覚えて製作するようになったらしい。昭和22年からは仙台に移って木地業を続けたた。
こちらが、そのこけしである。大きさは7寸。角張った頭になで肩の胴。前髪の後を緑点で囲い、そこから放射状に手絡を描いている。形式的には遠刈田系のこけしの範疇に入るのだろう。鬢は内側は短く外側は長い二段描き、眼点の大きな一側目に小さな丸鼻である。胴は上下を2本の赤ロクロ線で締め、その間に3段の横花(菊か?)を描き、最上部には蕾を添えている。Wikiには昭和30年代の作例が載っているが、そちらは胴は模様も含めてほぼ同じであるが、頭は丸く表情もかなり甘くなっている。こけしとしての出来は本作の方が遥かに優っている。昭和20年代の作であろうか。
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