第346夜:周辺のこけし(海谷周松)
10日程前、ヤフオクに珍しい古品が纏めて出品されていた。著名な工人のものでは無く、普段あまり目にしない工人のこけしであり、それが2,3本ずつセットで出ていた。それらのこけしは今まであまり注目したものではなかったが、保存状態も良い古品でありしかも大きさの違う複数本を入手できるため、出来るだけ頑張って入札に参加した。それらのこけしを順次紹介したいと思う。今夜のこけしは、海谷周松のこけしである。周松のこけしは実は以前から気になっているこけしではあったが、なかなか良品に出会わず入手には至らなかったものである。口絵写真は、その表情である。
海谷周松に関する文献での紹介は少なく、鴻(13号)に訃報(昭和16年8月2日に逝去、行年40才)とこけしのモノクロ写真が載っているくらいである。「こけし辞典」によれば、周松は明治35年11月15日の生れ、青根の木地師海谷周蔵の長男である。大正6年頃より叔父(継父)善蔵について木地修業。昭和14年頃、仙台に帰り弟吉右衛門の所でこけしを100本程作った。2年後には亡くなっているので、周松のこけしはこの14年作のみと思われる。
こちらがその周松のこけしである。大きさは、大(左)が8寸、小(右)が6寸である。逆おむすび形の頭に真っ直ぐな胴、胴模様はロクロ線のみである。ロクロ線は首下に紫の細い線を2本引き、胴下には太い赤ロクロ線で締めている。その間のロクロ線は、この2本で比べても多様で、6寸は赤と紫の太いロクロ線を交互に並べて、その間に緑、赤、紫の細いロクロ線を配している。一方、8寸は赤、紫の他に緑の太いロクロ線も加え、それぞれの細いロクロ線を加えている。胴に蝋を引いていないせいか、しっとりとした感じの良い配色になっている。
次に表情を見てみよう。前髪は真ん中に一筆入れ、その左右に横に長く描いている。その前髪の左右の端から鬢を描き、鬢上部に青二筆で鬢飾りを入れている。頭頂部には赤い線を髷状に2つ丸め、その先を後頭部に垂らしている。眉は太い線を真横に真っ直ぐ引き、目は切れ長の三日月目である。普通なら眉も目に合わせて湾曲させるのであろうが、これを真っ直ぐにしたことでキリッとした感じとなり、潤いのある瞳と相まって味わい深い雰囲気を醸し出している。縦線を二本並べただけの簡単な鼻、やはり赤二筆の口も素朴である。
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