第348夜:周辺のこけし(鈴木国蔵・幸太郎)
平成31年4月1日、清々しい青空の下、新年号の発表があった。『令和』。出展は「万葉集」とのことで初めて日本の書物から選ばれた。新年号が始まるのは5月1日からで、今日は未だ平成である。さて、今夜は一応、木地山系に分類されている鈴木国蔵・幸太郎のこけしである。入手したこけしに署名は無く、胴底に鉛筆で「湯沢 鈴木国蔵」の記入がある。しかし、この大きな頬紅を付けたこけしは、一般には息子の幸太郎作と言われているので、国蔵・幸太郎というタイトルにした。口絵写真は一番大きいこけしの表情である。
こちらが今回のこけし3本である。大きさは左から5寸6分、9寸、7寸8分。桃色の大きな頬紅が特徴的なこけしである。胴長のノッポな形態の3本であるが、大きさに合わせてか頭の形はそれぞれやや異なる。大正11年生まれの幸太郎は昭和13年小学校を卒業すると父国蔵から木地を習ったとあるから、14年頃にはこけしも作ったと思われる。その初期の作品は弥治郎風に頭頂部にはベレー帽状の模様を描き、額には赤と緑の半円状の飾りを付けている。素朴な一側目の眼点は大きいが鼻と口は小さく、大きな頬紅が否応にも目立つ。頬を真っ赤にして遊んでいる田舎の童女が目に浮かぶ。首下には赤と黒で襟を描き、赤の太いロクロ線を挟んで大きな楓を一葉描く、その下には赤と緑のロクロ線を配し、最下部は畳付け一杯まで太い赤ロクロ線で締めている。この下部のロクロ線模様も3本で少しずつ異なっている。なお、他の文献では楓模様の下には赤線で山形の模様を並べた様式のものも見受けられる。
3本の表情の違いをご覧頂きたい。左は丸顔に近く、右は面長、中央はやや縦長で角ばっている。大きさに合わせて表情にも成長が表れているようで面白い。なお、この頬紅を付けたこけしは30本程度しか作られなかったとあるので貴重なものかも知れない。
幸太郎のこけしについては千夜一夜(1)の第557夜で別様式の作を紹介しているので、それ(左)と中サイズのものを並べてみた。先ず、胴の形が異なるのと左には頬紅が付いていないのが大きな違いである。一見すると左作の方が古いもののように見えるが、左作には陸奥売店の印もあり、頬紅の右作の方が古いのであろう。
顔の表情を比べてみよう。左の作では眉・目が下がっていて、その分額が広くなっている。半円状の飾りも付いているが右の作よりは小さくなっていて大人しい表情である。右の頬紅こけしの派手さとは対照的である。
頭頂部のベレー帽の比較である。右作では一番内側のベレーは緑の円になっているが、左作では赤の円になっている。
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