第355夜:定助10年の軌跡
昨夜の作を含めて、定助のこけしが何本か集まったので製作順に並べてみた。定助は署名に年齢も記載しているので、こういう時には便利である。定助は高齢にも拘わらず、描彩のみではあったが相当数のこけしを作ったので中古市場でもよく見かけるこけしである。戦後は昭和20年代末から作っているが、本格的に作ったのは昭和30年代に入ってからで、大沼きみ子の仲介によるものが多かったようだ。今夜は手持ちの中では最も古い84歳作から晩年の93歳作までを眺めてみたいと思う。口絵写真は84歳作の表情である。
こちらが84歳作の全体像である。大きさは7寸。木地は誰か判然としないが、頭はやや横広気味で均整のとれた木地形態である。大振りの前髪に水引は左右に大きく2筆のみ。鬢は右は短い2筆と長い2筆の計4筆を重ね、左は長短1筆ずつの2筆で纏めている。鬢飾りも左右赤1筆のみ。眉目は顔のやや上方で左右に開き、大らかな表情の一筆目である。鼻は黒2点、口は赤2点で極めて小さい。胴模様は3段の重ね菊で筆致には切れがあり、菊花は右下がりに重ねている。
84歳以降の作を並べてみた。左から84歳、86歳、87歳ねまりこ、88歳、89歳ねまりこ、93歳たちこである。86歳は6寸、頭は縦長で84歳とは木地別人と思われる。前髪は小さくなったが水引と鬢飾りは多筆となった。上瞼と眼点が離れた描法は珍しい。鼻は2筆だが下部がくっついている。胴模様は細なでしこか。87歳は小寸のためか、面描は簡素、胴模様は楓。88歳は5寸8分で面描は87歳と同様だが水引の筆数が増えて華やかになっている。胴模様は太なでしこ。89歳は目が二側目で目頭に眼点が入っているため一筆目の定助とは表情が異なる。93歳は作り付けのたちこ。筆は一段と枯れ、手の動くままに描いたようなこけしである。
84歳と93歳と2本を並べてみた。筆の勢いに差があるのは当然だが、ここから受ける雰囲気は正に定助そのものである。
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