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第368夜:盛のもんぺこけし

Sakari_monpe_kaoヤフオクで高橋盛のもんぺこけしを入手した。ぜひとも手に入れたかったこけしの一本であった。戦前のこけしに「もんぺこけし」と呼ばれるものがある。弥治郎系の蔦作蔵や秋保の菅原庄七のこけしが有名である。胸部が膨らみ、そこからやや括れて腰部でまた膨らみ、裾部が窄まって最下部が台状に広がった形である。描彩はもんぺを履いた模様である。頭には髷を付けたものが多い。これに対して、今夜のこけしは形態は正にもんぺこけしであるが、頭に髷は無く、胴の描彩ももんぺ模様ではない。もんぺは太平洋戦争中は女性の標準服として全国に広まったが、元々は農山村の作業着であったようだ。東北地方では広く使われていたようで、そんなところからもんぺこけしも生まれたのであろう。口絵写真は盛もんぺこけしの表情である。

Sakari_monpe_2men

こちらが盛のもんぺこけしの全体像である。大きさは5寸5分。描彩、表情の特徴から秋田時代の高橋盛の作と思われる。盛のこけしに関しては多くの文献で紹介されているが、秋田時代のものに関してあまり目にしない。秋田時代の盛のこけしには、皆川たみ子などの女性描彩のものも入っていると言われており、本作もそのような盛こけしの1本なのであろう。鳴子を離れたことで盛のこけし製作も自由になったのあろうか、秋田時代の作には鳴子時代には見られない変ったこけしが存在する。第811夜で紹介した入れ子こけしもその一つで、他に都築コレクションには帯入りのものもある。本もんぺこけしもそのような自由な雰囲気の中で作られたのであろう。作り馴れた形態ではないが、流石に上手く纏めており、それほど違和感は感じられない。面描、胴模様は「高勘」の標準的なものであり、もんぺこけし様には替えていない。その辺は盛の矜持なのであろう。

Sakari_monpe_yoshikazu

さて、このこけしには思い出がある。このこけしは童宝舎の出品であり、「コレクション図集 こけし綴り(その四)」に掲載されている。平成15年、この「こけし綴り」でこのもんぺこけしを見つけた国恵は鳴子の高橋義一さんにその写真のコピーを送った。義一さんの母松子さんは盛の長女であり、一緒に秋田に行っていたからである。福寿さんは既に亡くなっており、秋田時代の盛を知っている唯一の人であった。義一さんの話では、松子さんは盛のもんぺこけしを知っていたとのこと。そこで、義一さんに写真を元に作って貰ったのが右のこけし(平成15年12月)である。「原」を見た訳ではないので、やや太目になっているものの、見事なまでに「盛」のもんぺこけしを写してくれた。

Sakari_monpe_hikaku

庄七のもんぺこけし(右)と並べてみた。形態的に同じもんぺこけしの分類に入っても、受ける印象は大きく異なるものである。

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