第369夜:梅吉こけしの魅力
梅雨真っただ中の天候の中、7月を迎えた。今年も半分が終わり、後半に入った訳である。国恵が梅吉こけしに興味を持ったのは、高橋金三の復元作を見てからである。良く筆の伸びたキリッとした表情、過剰とも思われるアクセントの付いた眉・目の描彩に惹きつけられた。藤井梅吉は「日本郷土玩具(東の部)」(昭和5年)で紹介されたが、昭和11年3月には亡くなっているので、その残るこけしも多くはない。古品市場に出てくるのも珍しく、数年前に楽語舎(旧たんたん)の即売会でようやく手にすることが出来た(第901夜参照)。それで一応満足はしており、あとは評価の高い手絡模様の梅吉を望んでいるが、それは今だに見かけない。今回の梅吉は黒頭ではあるが、面描と鬢の描法に惹かれて入手に至った。口絵写真はその表情である。
こちらが梅吉こけしの全体像である。大きさは8寸。頭部は手絡の無い黒頭。直胴に定番の5段重ね菊模様である。一番の特徴は鬢の描き方であろう。梅吉こけしはその製作時期の後半(昭和8年以降)では、殆どが黒頭で、鬢は描き出し部を揃え、そこから長方形形に平筆で描いたようになるのだが、本こけしでは描き出しを揃えておらず自然な形で描かれている。このような描き方は、「木の花(第八号)」の⑤(昭和7年頃)に近い。また、目の描法のアクセントは右目の下瞼に現れ始めている。このような特徴から、本こけしは製作の前半から後半に移る昭和8年頃の作と思われる。
手持ちのもう1本(左9寸)と並べてみて。
更に、両者の表情の違いを見てみよう。鬢と目の描法を比べて頂きたい。
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