第373夜:戦前の民之助こけし
8月に入り、夏真っ盛りの酷暑が連日続いている。古稀目前の高齢者にはなかなか厳しい気候である。心臓と大腸の精密検査を終え、今月中旬には人間ドックで検査の総仕上げである。さて、鳴子の遊佐民之助のこけしについては、第181夜で紹介したが、ようやく真の戦前作を入手することができたので紹介しよう。民之助の戦前作には大正期から昭和初期のもの(第一期)と昭和15~18年の復活期のもの(第二期)が知られており、今回はその復活期のものである。口絵写真はその表情である。
こちらがその全体像である。大きさは7寸、米浪庄弌氏旧蔵品(「こけし人形図集」掲載品)である。民之助の第一期の作には二側目や一筆目のものがあるが、本作は一側目であり典型的な民之助こけしと言えるだろう。この第二期の初作は深澤要氏の尽力により富田の「おもちゃ祭り」に出品されており、本作もその頃のもので、米浪氏が深澤氏から入手したようである。幸八系列特有の前髪に水引、4筆の鬢は外側が長くなっている。クリっとした愛らしい瞳は無心な幼子のきょとんとした表情を写している。胴模様は大きな赤い楓を二葉縦に並べ、下に赤で土玻(?)を描いている。胴のロクロ線は赤のみで緑は引かれていない。
胴底を見てみよう。「於芥子園」のラベルと米浪氏の青い5玉の米印が押されている。
第181夜の民之助(左、26年頃)と並べてみた。面描など頭部の描彩は戦前作と殆ど変わらず古い様式を残している。ただ、筆のせいであろうか戦後作は面描の筆致が細く、おとなしい表情になっている。また、胴には緑のロクロ線も加えられている。
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