第386夜:戦前武男こけしの検証(2)
昨夜は戦前の武男こけしとして、今回入手した昭和13年頃の8寸こけしと第823夜で紹介したそれよりやや前と思われる5寸2分の2本のこけしを紹介した。国恵志堂には、それ以外にもう1本、武男作ではないかと推測しているこけしがある。千夜一夜(1)の第26夜で紹介した紀元2600年の焼印が押された尺のこけしである。この尺こけしはその写しを高橋正吾さんに作って貰う際に鑑定してもらい、一応武蔵作ということにはなっているが、描彩には他の高亀の工人が加わった可能性もあるとのことであった。そこで、今回はそのこけしも含めて、戦前武男こけしを更に検証してみよう。口絵写真は紀元2600年のこけしの表情である。
戦前の高亀の工人と言えば、武蔵、武男、直次ということで、ほぼ同時代の3者のこけしを並べてみた。左から武蔵?(S15.7)、武蔵(S14.5)、直次(S15.6)のこけしである。大きさは尺。直次は他の2点とは明らかに違うので外すとして、ほぼ1年程しか違わない左と右のこけしを同じ武蔵として片付けるのは無理がある。真ん中が武蔵であることは間違いであろう。左は胴模様も顔の表情も真ん中とは明らかに違う印象である。
ここで、昨夜の5寸2分の武男に登場して貰おう。尺とその半分という大きさの違いはあるものの、姿・形はよく似ている思える。丸い頭、直線的ですっきりとした胴と肩の山の盛り上がり、ロクロ線の入れ方、そして表情は眉と上瞼の湾曲を大きくすればほぼ同じになるのではないか。そして、この2本は戦前武蔵の特徴である下目にはなっていない。
昨夜から二夜連続で戦前の武男こけしを見て来た。これに、戦後直ぐの武男こけし(左)を加えて並べてみた。右から昭和13年応召前、応召後の休暇帰省時に作ったもの(2本、昭和14~15年)、昭和20年代初め。こうして並べて見ると、顔の表情、そして重ね菊の様式(特に花芯の巻き方)に一連の流れと共通点が感じられる。そして、戦前・戦後を通して頭頂部の赤い水引は決して後髪と交差しないところに、武男の矜持と実直さを見る思いがするのである。
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私の持っている武蔵のこけしにはひょうたんのような焼き印があるのですが・・・それがなんのしるしかわかりません。もし、ご存じでしたら教えて頂けませんか? よろしくお願いします。
投稿: まめちゃん | 2019年10月14日 (月) 00時03分
まめちゃん様
古いこけしには焼印が押されたものが時々ありますね。工人印か工房印か販売店印か、または収集家印か・・・。
ひょうたん形のも見たような記憶はあるのですが思い出しません。分かったらお知らせします。
投稿: 国恵 | 2019年10月15日 (火) 17時11分