第394夜:再び武寛…
大滝武寛のこけしを知らなかった訳ではないが、関心を持ったのは大阪こけし教室の機関紙「こけし山河」で高橋正吾さんが武寛型を作っているのを知ってからである。武寛のこけしは胴下部に緑のロクロ線をぼかして描くのが特徴で、その木地下は鳴子の「高亀」で作っていたという話は友の会でも話題となり承知していた。そんな折、今年の初め、ヤフオクに武寛のこけしが出品され入手することが出来た。既に作っているのならということで、その武寛こけしを正吾さんに預けて写しを作って貰ったことは第364夜、365夜で紹介した。その武寛こけしが再びヤフオクに出品された。今回は、えじこと尺物が別々にである。その内の尺物を入手出来たので紹介したい。口絵写真はその表情である。
こちらが、そのこけしである。大きさは尺。肩には段があり、その肩は丸くなっている。武寛のこけしにはkokeshi Wikiやこけし辞典に掲載されているように肩に段のあるものも見られるが、丸肩のものは初見である。また、その肩には涎掛けのような半円形の模様が付いており、形態共々温海の阿部一家(常吉、進矢)の形によく似ている。この大きさで鳴子系の木地なら、頭は嵌め込みが普通であるが、本作では差し込みのようである。この点は正吾さんに聞いてみたいものである。温海こけしの影響はあったものと思われる。胴正面には大きな楓が一葉、裏面には二葉描かれている。
胴裏を見てみよう。楓が2つ描かれている。また、胴下部には緑のぼかしロクロ線、肩口には涎掛けが見て取れる。また「出羽鶴岡住 大滝武寛作」の署名が大きく書かれ、その横に「昭和十一(十二かも)年三月」と製作日付も書かれている。
前回のこけし(左:5寸2分)と並べてみた。楓の形、下目の愛らしい表情など良く似ており、同時期の作品と思われる。
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