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第400夜:佐藤誠次のこけし(2)

Seiji_s19_kao 今年も残り半月というところで400夜に達した。更新のペースは鈍っているが、今は続けることが大事と思っている。さて、先日、ヤフオクで佐藤誠次のこけしを入手した。荒川洋一の亥一型などと4本セットの中に入っていた。誠次のこけしも多くは無く、珍しいこけしの部類に入るであろう。ちょうど1年前の12月のヤフオクで入手した10本セットの中にも誠次(戦前作)が入っており、今回改めて並べて比較してみた。誠次のこけしに関しては、戦後作を千夜一夜(1)の第342夜で紹介しているが、今回の2本はそれとは趣が異なるものであった。口絵写真は戦前誠次の表情である。

Seiji_3hon

第342夜のこけしも含めて、手持ちの誠次こけし3本を並べてみた。右は第342夜紹介の8寸で昭和30年代前半(33年頃か)の作、真ん中9寸6分は胴底にS19年の書き込みがあるもの。そして左7寸7分は胴底に34年1月(58才)の書き込みがある。Kokeshi Wikiによれば、誠次の戦前作は昭和13年頃からのものが知られているが、木地文六や文六の代作もあるようだ。Wikiには「戦後は一重瞼に代わり…」とあり昭和33年作の写真が載っているが、真ん中の本作は一重瞼(一側目)であり、その走りなのかも知れない。

Seiji_s19_2men

改めて、真ん中のこけしを見てみたい。頭は縦・横の長さがほぼ同じの角型でやや小振りであり、胴はかなり長めである。胴の上・中・下には赤を主体とした太いロクロ線を配し、その間に好んで描いたという旭菊を一輪ずつ大きく描き、旭菊に被さるように大きな葉を描いている。前髪を左右に分け、一側目の表情は眼点鋭く、キリッとした端正な表情である。口は赤のみで素朴である。この一側目は戦前の文吉とも相通じる点があるように感じる。

Seiji_s34_2men

次に左のこけしを見てみよう。胴の形・大きさは右のこけしと殆ど変わらないが、頭はかなり小さくなっている。胴上下のロクロ線が両端に寄って間の空間が広がったためか、その間に描かれる菱型菊は4段重ねとなった。右こけしの3段では3つを均等に並べているが、左の4段では4つが均等になっておらず、こちらも上から3段で描き始めたものの、最後の1つが間が空いたため2つにしたようにも見える。

Seiji_s34_kao_hikaku

左右のこけしの面描を見てみよう。両者の製作時期に大きな隔たりはないと思われるが、表情から受ける印象はかなり異なる。右こけしの頭は丸みのある縦長であるが、左の本作では縦が短く角張も大きくなって真ん中の戦前作に近くなっている。大きな前髪は両者共通であるが、左では鬢が短くなり、鬢上部は眉の位置になっている。眉・目の描線は細く湾曲も少なくなった。頭の長さが短くなった分、目の位置も下がった。右では面描が中央に寄って溌溂とした表情になっているが、左では上下に圧縮されたような表情になっており対照的である。一方で、左の面描ではこちらを見据えるような瞳、潰れた鼻、墨で輪郭を描いた口の中を赤く塗るなど湯田の風土性が色濃く滲み出ていて、味わいという点では3本の中で一番惹かれるものがある。

 

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