第405夜:正吾さんの武寛写し(尺とえじこ)
令和新年2日目、自宅から待望の日の出と富士山を仰ぎ見ることができた。恒例の箱根駅伝は青学が復活の往路優勝、明日の復路が楽しみだ。さて、国恵が大滝武寛のこけしに興味を持ったのは最近になってからである。東京こけし友の会(平成30年9月)の例会で会員から鳴子の高橋直次のグラデ―ションこけしの話があり、そのグラデーションは大滝武寛が「高亀」に依頼した木地に描かれたものであるとのことであった。昨年の3月、ヤフオクに大滝武寛のこけしが2本出品され、入手することが出来た。同じ頃、大阪こけし教室の依頼により正吾さんが、このグラデーションこけし(武寛型と直次型)を作っていることを知り、正吾さんにヤフオク入手の武寛こけしの写しをお願いした。その後、またヤフオクに武寛の尺とえじこが出品され、尺物を入手した。その尺物とえじこの写しが正吾さんの90歳初作として昨年末に届いたのである。正吾さんには昨年1年で4種類の武寛写しを作って貰ったことになる。今夜は、その尺物とえじこを紹介したい。口絵写真はえじこの写しである。
正月2日目の日の出(左)とそれを受けて桃色に染まった富士山(右)。いずれも自宅のベランダから撮影したもの。
さて、今回「原」となった武寛こけしについては、第394夜で紹介した。大きさ1尺の堂々たるこけしであるが、残念なことに胴の描彩は赤と胴下部裏面の青いグラデーションが薄く残っているだけで、色彩の迫力は殆ど無くなっている。そのような部分に関しては正吾さんの考えで補って貰った。なお、尺物は流石に大きいので1本とし、他に8寸に縮小したものも作って貰った。
先ずは、「原」と写しを比べてみよう。「原」の胴と頭は差し込みのようで回らない。従って「原」の木地は「高亀」で作ったものではないかも知れないが、正吾さんの写しは嵌め込みで回すことができる。胴下部の青のグラデーションは胴裏から確認できるが胴上部は赤のロクロ線と半円形の涎掛けしか描かれていないようだ。しかしそれでは如何にもあっさりし過ぎているので、正吾さんは上部にも青のロクロ線を入れてくれた。これで色のバランス的にもしっくりして、3葉(前1葉、後2葉)の楓模様が引き立っている。
次に、表情を見てみよう。「原」はやや縦長の丸頭であるが、写しはやや横長の丸頭になっている。太い眉に大きなクリクリの二側目、3筆の鼻、口は墨1筆に紅を添えている。「原」は上瞼の湾曲が大きくキョトンとしたあどけない表情であるが、写しは上瞼がそこまで丸く無く大らかな幼子の表情になっている。多少雰囲気は異なるものの、いずれも愛らしい表情に変わりはない。
こちら、尺物(中央)と8寸に縮小したもの。
この尺こけしと一緒にヤフオクに出品されていたえじこは入手できなかったが、出品の写真(上)があったので、それを元にえじこも作って貰った。写真から見ると、胴には何も描かれてなく肩の部分のみ赤く塗っているように見える。これも正吾さんの考えで、胴の上部には赤と青のロクロ線を入れ、下部には赤ロクロ線と青のグラデーションを追加してもらった。それでも、胴に何もないと寂しいので楓を3葉入れて貰った。また、肩部の赤の塗りつぶしも半分にし、前面には赤1筆のアクセントを入れて貰った。
最後に、昨年正吾さんに作って貰った武寛写しを群像にしてみた。素晴らしい作品群が出来上がり嬉しい限りである。
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