第420夜:五平のこけし(初期)
新型コロナウィルスはあっという間に世界中に広がり、今や世の中自粛ムードに沈んでいる。感染が怖い我々高齢者はコロナが収まるのを自宅でひっそりと待つしかない。こうなると、もうネット・オークションでこけしを眺める時間が増えていく。そんな我々を楽しませるように古品が出品されて、締め切り間際には価格の競り合いで血圧も上がっていく…(苦笑)。先週末にはヤフオクに保存状態の良い古品が十数点出品され、国恵も参戦していた。ところが、今回は相当の高値で応札する御仁が参戦してきて目ぼしいものを殆ど持って行ってしまった。国恵は何とか欲しかった五平2本を入手できたが、これは締め切り時間の関係で、その御仁が参加されなかったというラッキーな面もあった。さて、今夜は、その2本の五平こけしを紹介したい。口絵写真は、小寸(4寸)五平の表情である。
こちらが、今回入手した五平のこけしである。大きさは左が6寸で右が4寸。五平のこけしは結構残っていて戦前作でもそれ程入手難ではないが、流石に初和初期以前のものとなると、特に保存状態の良いものは多くはない。今回の2本は文献等で紹介されたものではなく、新たにこけし界にデビューしたものと言える。6寸物の胴裾部と4寸物の胴上部にやや水濡れと思われる所があるが、退色もなく保存状態は良い。文献等で五平のこけしを調べてみると、この2本は昭和の一桁台の作で、右は正末まで遡れるかも知れない。6寸物は反りのない直胴で頭は丸みを帯びた平頭、4寸物は胴は中央やや上に括れを持ち、頭が小さいが角張った平頭である。これは鳴子本流のたちことは異なり五平独自の形になっている。胴模様は6寸物が菱菊で、上部の横菊は向かって左下がりに描かれ、下部の正面菊は花芯部が大きく、周りの花弁が小さいのでヒマワリのようである。4寸物の胴模様は牡丹であろうか、五平の小寸物にはよく描かれている。6寸物では上瞼が細く眼点も小さめのためきつめの表情となっている。一方、4寸物では眉、上瞼、眼点の筆致が太く、眉・目が外側に開いて描かれており、小寸ながらキリッとした品格のある表情をしている。
頭頂部を見てみよう。前髪は、6寸物は鳴子系標準の櫛形、4寸物は細部を省略して三角形に纏めている。
胴底の書き込み。2本とも、観光地「十和田(湖)」のお土産として売られたものであろう。大正から昭和にかけて、五平を始め、同じく大湯の長谷川清一のこけしがお土産物屋に並んでいたのであろう。署名など無く、購入者が作者名を書き込んだものと思われる。そのため、この両者の名前は写真左のようにしばしば間違って書かれていることがある。
次回は、戦前の五平こけしの変遷を辿ってみよう…
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