第426夜:不遇の忠こけし
ヨーロッパとアメリカで爆発的な感染拡大を続けている新型コロナウィルスは、この週末は日本でも正念場を迎えており、桜満開の東京を始め各所で自粛の要請が広がっている。我々老人は自宅籠城を余儀なくされているので、国恵も最近滞りがちな本ブログの更新に勤しんでいる。未だ掲載されていないこけしを探し出し、その解説を付けるのである。今回は昨夜の忠市こけしとの繋がりから、師匠の父忠のこけしを取り上げることとした。このこけし、実は平成30年12月の「ひやね」こけし往来(第59集)の入札品に掲載されたもので、尺2寸という大きさと5万円という最低価で避けられてしまったのか応札が無かったらしく、その後「ひやね」店頭で目にしたことがあった。そのこけしが昨年12月に今度はヤフオクに出品され、価格も下がったので入手したものである。口絵写真はその忠こけしの表情である。
こちらが、その忠のこけしである。大きさ尺2寸の堂々たるこけしである。頭部はやや黒ずんでいるが、胴は退色も殆ど無く、紫のロクロ線、赤と緑の菊模様が鮮やかである。「ひやね」の往来入札時に応札が無かったのが不思議なくらいである。胴底には「S15頃」との鉛筆書きがあり、眉・目の描線も細く優しくなっている。このこけしの一番の特徴は、胴模様であろう。忠のこけしは大寸物では大輪の菱菊を描くのが普通(下記写真右)であり、このような菊模様は他に見たことがない。この点が却ってマイナスに働いて応札が無かったのかも知れない。どうして、このような模様のこけしが生まれたのか気になるところである。そこで他の工人の作を探してみた。
こちら、左は大沼(後藤)希三のこけし(昭和14年)で、右は忠の標準的な胴模様のこけし(昭和13年頃)である。希三のこけしとは中段の小菊が横菊(希三)と丸菊(忠)の違いはあるが、下部の大きな正面菊の描法(細い花弁)や添え葉の形など雰囲気は近い。もっとも、希三は大沼竹雄の影響が大きいと思われるが…。
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