第429夜:今泉源治の由吉型(3)
TVを見ていたら、露店が出て大いに賑わっている巣鴨商店街が映された。4日(土)の映像である。とげぬき地蔵尊高岩寺は毎月4の付く日が縁日になっており、そのために多くの人がやってきたのであろう。東京都全体に自粛要請が出て多くの繁華街が閑散としている中、異様な光景であった。高岩寺では毎年、朝顔と菊の季節にこけしの催しが開かれており、その都度出掛けていたので特に気になった。今年も7月と11月に開催の計画があったが、少なくとも7月の開催は難しいかも知れない。その人出を見て巣鴨商店街には多くの苦情が寄せられたようだ。さて、最近はコレクターがこけしを整理するためにヤフオクを利用することが多々あり、その場合、数本のこけしを纏めて千円程度で出品される。それらを見ていると、なかなか面白いものが含まれており、そのようなものを安価に入手することは嬉しいものだ。今夜紹介する今泉源治さんのこけしも、そのようにして入手したもの。口絵写真はその表情である。
こちらが、その由吉型のこけしである。大きさは7寸。裾部がやや窄まったエンタシスの胴にやや縦長の四角い頭。土湯系本流の湊屋のこけしらしく美しい木地形態である。胴模様は太い赤ロクロ線を主体とし、それに細い緑の3本ロクロ線を挟み、中央部には赤の稲妻線と波線を配し、胴下部にはアクセントとして黄色のロクロ線を入れている。面描は頭頂部の小さな黒の蛇の目から前髪を描き、先端は8つに分かれている。目尻と目頭がくっ付いた二側目は静かな微笑みを湛えている。品格のある由吉型こけしである。
第567夜で紹介した由吉型(左2本)と並べてみた。左の由吉型は、三角胴の形態に潰し目のような表情で、同時期に作っていた浅之助型の影響が色濃く残っているこけしであった。それと比べて、本項の由吉型は各段に由吉の情味に近づいているように思える。胴底にかすかに残る鉛筆の書き込みは44年と読みとれる。
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