第434夜:竹雄の草書体
このこけしも整理中に出てきたもので、昨年の10月にヤフオクで入手したもの。大沼竹雄のいわゆる草書体時代のこけしである。これも保存状態が良くなかったので、本ブログで直ぐに紹介せずに仕舞ってしまったのだろう。取り出して、竹雄の草書体時代のこけしを文献等で調べたが、この形のこけしは見当たらない。この形自体は、元村勲先生蔵の岩太郎と言われた4本のこけしの中にあり、それは秀雄さん、秀顯さんが復元しているので良く見かけるものである。しかし、それ以外には見当たらない。しかも、元村蔵品は一筆目であるが、本稿のこけしは一側目なのである。口絵写真はその竹雄こけしの表情である。
こちらがそのこけしである。大きさは5寸1分の作り付けである。胴底には橘文策のラベルが貼ってあり、「鳴子 一九二五 作者不詳」と書かれている。1925年ということであれば、正に「正末昭初」ということになる。元村蔵の作と比べると胴はやや細身で裾へかけての反りが大きいようだ。小寸物のためか、胴にロクロ線は無く、胴下部に鉋溝が1本入っている。胴模様は牡丹であるが、緑の彩色は残念ながら消失している。鬢は外側に寄って顔の面積は広く、眉・目も外寄りで右目がかなり下がって描かれ、鼻も大きいため、漫画チックで味のある表情になっている。
第199夜で紹介したほぼ同時期の竹雄こけし(右)と並べてみた。細身で胴下部に鉋溝の入った木地形態、大きな5筆の鬢飾り、左右に開き右目が下がった表情など、醸し出す雰囲気は良く似ており、正に草書体時代の代表作と言って良いだろう。
秀雄さん(左)と秀顯さん(右)の同型のこけしと並べてみた。秀雄、秀顯両工人の作は元村蔵岩太郎の原を参考にしているため、本稿の竹雄とは異なる点も見受けられる。
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