第432夜:庄七の三蔵型
緊急事態宣言が出てから一週間、休日の自粛は目標の80%に近いところまで行くが、平日の通勤状況にはあまり効果は表れていないようだ。今がピークと考え、これ以上の感染拡大を何とか抑えたいものだ。国恵も週に一二度、食料の買い出しに行く以外は自宅でインドア・ワークに勤しんでいる。必然的にヤフオクでこけしを見る機会も増えている次第。そんな中、先日は二重の愛らしいこけしに目が行った。菅原庄七のこけしである。庄七のこけしに二重瞼のものがあることは知っていたが、これまでは大寸のものが多く、今一つ入手には至らなかった。今回の庄七は6寸の大きさ、同じ6寸の三蔵こけしを持っているので、並べて見たいと思い入札に参加した。今夜は、その二重の庄七こけしを紹介したい。口絵写真はその表情である。
こちらが、その庄七こけしである。大きさは6寸2分。庄七の師匠である佐藤三蔵は昭和15年に復活し、こけしを少数作った。庄七が二重のこけしを作ったのはその翌年の16年からで、これは三蔵型と呼ばれている。しかしながら、三蔵の残るこけしに二重のものは見当たらず、実際に作ったのかどうかも定かではない。目が二重であること、垂れ鼻であること、重ね菊の葉が本型の三筆より複雑な描法になっていることなどが特徴となっている。庄七のこけしは美人こけしとして有名であるが、この三蔵型は愛らしいこけしと言えるだろう。
手持ちの三蔵こけし(右:第180夜参照)と並べて見よう。こうしてみるとピッタリの大きさである。というよりか木地は同じ物のようにそっくりである。こんなに木地が似ていると、まるで三蔵が弟子の庄七を呼んだみたいに思えて微笑ましい。庄七は胴上下に2本ずつの太い緑ロクロ線を引き、間の胴模様は三段の重ね菊。一方の三蔵は上下の緑ロクロ線は間に細い緑ロクロ線を1本挟み、胴模様は「る」の二段重ねとなっている。面描は全く異なっており、三蔵型とは言え、共通点は垂れ鼻くらいで、とても右のような三蔵をもとにして作られたとは考え難い。
頭頂部の様式についても紹介しておこう。こちらでも三蔵との共通点は特に感じられない。
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