第446夜:照井音治のこけし
今日から5月である。この時期、普通なら五月晴れの青空に五色の鯉のぼりがはためき、華やいだ雰囲気に包まれる。そんなのどかな情景は年明けから広がり始めた新型コロナウィルスによって一変してしまった。昨日、一昨日と50を切った東京の新規感染者数は再び150を超え、6日までの緊急事態宣言の延長が決まったようだ。さて、こけしの話に移ろう。南部系の照井音治のこけしは盛んに作った時期が短かったため残るものが少なく、こけし市場にもなかなか出てこない。国恵志堂には1本あり、第50夜で紹介した。その音治は晩年と思われ、筆力も弱くなっていた。そんな音治の盛事のこけしを昨年ヤフオクで入手したが、本ブログでの紹介が未だだったので改めて紹介しよう。口絵写真は、その表情である。
こちらが、その音治のこけしである。大きさは6寸5分である。音治のこけしは胴が太いので、大きなものはボリューム感に溢れた堂々たるものであるが、本作くらいの大きさは手頃でちょうど良い。緑の色も程々に残っており、保存状態としては良い方であろう。頭はかなり角ばり、胴にはキナキナ様式の緩い嵌め込みとなっている。遠刈田式の鬢飾りと手絡模様の線は細く、赤の色も明るい色なので割合あっさりとしている。前髪と鬢は平筆で筆跡を残して描いている。眼点は下瞼からはみ出ており、溌溂とした元気な表情である。胴模様は三段の重ね菊であるが、緑の添え葉は菱形の4点模様に抽象化されている。音治がこけしを最も作ったという昭和11~12年頃の作と思われる。
音治のこけしを継いだ佐藤英吉の息子忠雄のこけし(右)と並べてみた。洗練された木地・描彩は時代の差を感じさせる。
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