第449夜:秀雄さんの最初期こけし
先日のヤフオクにあどけない表情が何とも気になるこけしが出ていた。鳴子の大沼秀雄さんのこけしである。秀雄さんは今年2月で90歳となった。こけし作りは辞めているが、鳴子では高橋正吾さんに次いでの長老であり、昔の話も色々聞けるので有難い。「こけし 美と系譜」掲載の秀雄さんのこけしは初期のものであり、それが国恵のこけし収集の原点の一つであることは度々述べてきたことである。そのため、初期秀雄こけしは常に注目して追及してきた。先日のヤフオクにはその秀雄さんの初期こけしが2点(1点はひやね出品で締め切りは後ろ)出ていた。2点とも初期こけしの範疇に入るものであるが、国恵が目を付けていたのは「最初期」のもので、こちらは締め切り日が早かった。ひやね出品作は最初期よりは少し後のもの。両者の違いについても解説しよう。口絵写真は今回入手の最初期秀雄こけしの表情である。
こちらが、そのこけしである。大きさは8寸。胴底には秀雄さんの署名以外に製作日が分かるような記載はない。お母さん(みつを)の手本を介して作った竹雄型のこけしであり、奇をてらわず素直に作られたこけしは好ましい。国恵は初期の秀雄こけしが好きなので、千夜一夜(1)の第56夜を皮切りに、第619夜、第630夜でも記載している。概ね昭和30年代の中頃辺りまでが初期こけしの範疇である。では、最初期とはどのようなこけしなのであろうか…
こちらに所蔵の初期秀雄こけしを並べてみた。左から、昭和33年11月、同12月、本作、昭和34年3月のこけしである。はにかんだようなあどけなさが身上のこけしである。木地形態・胴模様に大きな変化はないが、面描をよく見ると違いがあり、その点を基準にして国恵は最初期として区別している。
右3本の顔の部分をじっくりと比べてみよう。お分かり頂けたであろうか。注目点は2点。1つは鬢の筆数で、左2本では3筆描きであるが右では4筆となっている。これ以降、定寸こけし(7,8寸)では4筆描きとなってくる。もう一つは頭頂部の水引である。水引は左右5筆ずつで描かれるのだが、左こけしでは向かって左の水引の内、前2筆が前方に垂れている(右の水引は水平)。中央のこけしでは水平に近くなってきたが前垂れに近い。これが右こけしの水引では左右とも同じように水平に描かれている。これ以降の秀雄こけしでは水平に落ち着く。この2つの識別点から、本作は「最初期」のこけしであり、製作時期は昭和34年の初め(1~2月)辺りではないかと推測される。なお、ヤフオクのひやね出品作は、この2点から最初期以降の初期作と言えるだろう。
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