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第450夜:欲しいと思わせるこけし(昭二さんの甚四郎型)

Syoji_jinshiro_kao 昨日でGWも終わり、緊急事態宣言も終了する予定であったが、コロナ感染の減少はそこまで至らず、今月末までの延長となった。まだまだ我慢と忍耐の自粛生活が続く…。さて、鳴子の桜井昭二さんと言えば、大沼岩蔵こけし継承の第一人者として誰しもが認める著名工人であるが、岩蔵型以外にも庄司永吉型を始め父母の万之丞・コウ型ほか各種のこけしを作っている。伯父である甚四郎の型もその一つである。甚四郎のこけしは、鳴子時代、北海道(洞爺湖)時代のものが残っているがその数は少なく、昭二さんが作る甚四郎型も他の型のこけしに比べると多くはない。国恵もこれまで昭二さんの甚四郎型を何本か所有したが1本を残すのみとなっていた。そんな中、ヤフオクで久しぶりに欲しいと思う甚四郎型に出会った。今夜はそのこけしを紹介しよう。口絵写真はその表情である。

Syoji_jinshiro_2men

こちらが、その甚四郎型のこけしである。大きさは7寸5分。「原」こけしは昭和15年に深沢氏が北海道洞爺湖に甚四郎を訪ねて作って貰ったものである。原こけしの大きさは8寸5分であるので、少し縮小しスマートな作りになっている。角張った頭、裾部が広がった胴で肩の山は平たい。ほぼ忠実な写しと言って良いだろう。このこけしの一番の見どころは表情、特に面描と言えるだろう。

Syoji_jinshiro_hikaku

手元に残っていた甚四郎型(左)と比べてみよう。左こけしは大きさ7寸。桜材であろうか綺麗に挽かれており光沢がある。形・描彩の特徴から右の本作と同型の甚四郎型であろう。胴底の署名の書き方から両者は近い時期に作られたものと思われる。左も標準以上の出来で立派な甚四郎型であるがそれほど惹かれるこけしではなかった。その違いは表情にあるのだと思う。

Syoji_jinshiro_kao_hikaku

顔の部分を見てみよう。そのこけしに惹かれるかどうかに関して表情の占める部分は大きいと思う。対象のこけしが「〇〇型」という場合は「原」との比較も重要である。「原」に似ているかどうかがそのこけしの魅力の全てではないが、やはり大きな要素にはなる。先ず、左のこけし。眉・目の描線がなだらかであり穏やかでおとなしい表情である。特に甚四郎の原を連想させる訳ではなく昭二さん自身の顔と言っても良いほどである。一方、右こけしではどうだろうか。ここでは「原」こけしを見て貰いたい。眉・目が鋭角的に曲がりアクセントも付いて、強い表情になっているのが分かる。鼻と口についても、左こけしは鼻が大きく口は横長の赤1点、右こけしは鼻が小ぶりで口は原のように赤2点ではないが丸い赤点となっているために原に近く見える。また、右こけしの前髪がややアンバランスなのも好ましい。右こけしの顔は「原」こけしのイメージを彷彿させ、どう見ても「原」をかなり意識して描かれたのだろうと思えてしまう。同じ甚四郎型を作っていても、その時のこけしに対する姿勢・想いはかなり違っており、その想いがこけしの表情に現れ、見る人の心にも響いてくるのであろう。そしてそれが「欲しい」という気持ちに繋がっていくのだろう。昭二さんの甚四郎型はこの1本で十分と思わせる魅力的なこけしである。

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