第453夜:野地スマイル(2)
昨夜は野地忠男さんの由吉型の最初期と思われる昭和53年作のこけしを紹介したが、その解説の中で触れた「こけし手帖441号」の写真(6頁④)には昨夜紹介のこけしと同手のものと並んでもう1本、6寸のこけしが紹介されている。そのこけしは同じ6寸の大きさであるが、頭の形が逆おむすび形で胴はやや太く三角胴に近いものである。そこで、手持ちの野地こけしを探したところ、そのこけしとほぼ同手のこけしが見つかった。太目で表情はやや異なるが、胴のロクロ模様の様式は同じである。今夜は、そのこけしを紹介しよう。口絵写真は、そのこけしの表情である。
こちらが、そのこけしである。大きさは6寸。製作時期を示すような記載は無い。頭は頭頂部が平らで横に広く、手帖紹介のこけしよりは頬がふっくらとした感じである。頭頂部の蛇の目、カセ、前髪、鬢などは昨夜のこけしと同様である。二側の目は上瞼が丸く盛り上がって眼点は大きくなり、愛らしいスマイルとなっている。頭が横広になった分、左右の眉・目の間隔が開いてゆったりとした表情となっている。胴模様の赤色は昨夜のこけしより明るい赤であるために、表情と相まって暖かい雰囲気のこけしになっている。
昨夜のこけし(左)と並べてみた。右の写真はこけし手帖441号の写真と同一のこけし2本で「地梨34号」の写真からお借りした。この2本を比べてみると、頭の形や表情の違いの他に、同じように見える胴のロクロ模様にも少し違いがあることが分かる。右写真の2本は眉尻が上がっており、きつい表情であるが、左写真の2本では眉は平らであり、穏やかな表情のこけしになっている。手帖で紹介された初期由吉型の2本が偶然にも揃ったことは嬉しいことであり、味わいの異なる「野地スマイル」はいつまでも見飽きない。
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