第458夜:大弘さんの民之助写し
今日の東京のコロナ新規感染者は8人となり、ようやく関東一都三県と北海道の緊急事態宣言も解除されることになった。だからと言って急に自粛体制が無くなる訳でもなく、コロナ禍以前の生活への復帰は難しいが、それでもヤレヤレ一段落といった明るい気持ちにはなる。さて、鳴子の松田大弘さんにお願いしていた戦前民之助の写しが送られてきた。大弘さんは未だ高々3年ほどの製作歴であるが、進境著しく魅力溢れるこけしを作っている。前回(第401夜)は庸吉型を作って貰ったが、庸吉の「はかなげで恥じらいのある愛らしさ」とは全く対照的な民之助の「キョトンとあどけない愛らしさ」を見事に再現してくれた。今夜は、その民之助写しを紹介したい。口絵写真は、やや斜め上から見た民之助写しの表情である。
こちらが「原」の民之助こけし(中央)と大弘さんの写し(左右)である。大きさは7寸。「原」こけしは第373夜で紹介した米浪氏旧蔵品である。木地形態から描彩にいたるまで、「原」を細部まで忠実に写している。民之助は戦後の昭和20年代末にも線前作を彷彿させる佳品を残しているが、それらの胴模様は殆どが菊模様であり本作のような楓模様は見かけない。大弘さんも大きな楓はあまり描いたことがないと心配していたが、大きな2葉の楓を見事に描いてくれた。赤の色は3色を混ぜて作ったそうで、その深く沈んだ紅色は線前作の雰囲気に良くマッチしている。
顔の表情を比べてみよう。ザンバラ気味の前髪に外側が長くなる鬢、水引と鬢飾りは前髪から後ろになびいている。小さな眉に円らな瞳は無邪気にこちらを見つめている。二筆の紅口は鼻の下に斜めに打たれている。こちらも見事としか言いようがない。
「原」こけしでは、肩の上面から山にかけて赤色が塗られているのだが、最初はこれが抜けていた(右)。この肩の上面を赤く塗る様式は戦前の鳴子こけしでは常套手段であったのが戦後は忘れられている。今回はこれを追加した(左)ことで、戦前の古雅な雰囲気が高まった。
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