第460夜:奥瀬一家の古作挑戦
今日から6月に入り、東京のコロナ対応ロードマップもステップ2に移行した。新感染患者数が再び2桁台に上がり心配は絶えないが、経済活動との関係もあっての前進と思われる。欧米を始め外国の状況を見ても、日本より遥かに感染者数が多いにも拘わらず、感染防止策の緩和が進んでいるのも気になるところである。今日は3/26以来の電車に乗って薬を貰いに病院に行ってきたが、久し振りの外出で足の衰えを感じてしまった。さて、毎日ヤフオクを眺めていると時の流れを感じることが多々ある。奥瀬鉄則の6寸から8寸の3本組が、保存状態も良好なのに最低価3000円で誰も応札が無いのである。第二次こけしブームの頃、1本の鉄則こけしを入手するために大変な苦労したのが夢のようである。今夜紹介する陽子さんのこけしもヤフオクで最低価での応札が無く、再出品されたので入手した。やはり他に応札は無かった。口絵写真は、その陽子こけしの表情である。
今回のテーマである陽子こけしは盛秀太郎の大正期と言われる古作こけしの復元で「原」こけしは天江富弥氏の旧蔵品。大きさは4寸6分。『こけし這子の話』で紹介されたものである。胴の肩部には唐草模様、その下は赤、紫、黄、緑のロクロ線が交互に引かれ、垂れ目に大口のユーモラスな表情で知られている。このこけしの復元作は鉄則さん、陽子さん、恵介さんの一家三人が作っている。
こちらがその復元作で、左から鉄則作(6寸、昭和50年代末)、陽子作(5寸、H9.12.19)、恵介作(5寸、04.6.27、4寸、04.11.11、4寸5分、09.2.3)である。鉄則さんが盛秀の古作復元を始めたのは昭和50年代の後半になってからで、作られた種類も数もそれほど多くはない。盛秀の古作は泥臭さやグロテスクさなどの迫力溢れる表情が魅力でもあるのだが、鉄則さんはそれを現代的な感覚で昇華し、都会的なスマートなこけしに作り上げた。そこには津軽の風土性はあまり感じられない。このこけしでも、表情は泣きべそをかいたような漫画チックな顔になっていて面白い。陽子さんは当初から盛秀古作を各種作っているが、その表情は鉄則さんを引き継ぎ、更に女性らしい愛らさを加えたこけしに仕上げている。鉄則さんによって始められた津軽こけしの近代化の完成と言って良いかも知れない。一方、恵介さんは父・母の築き上げた路線を引き継がず、最初から盛秀の泥臭さ・グロテスクさの追求に努め、特に初期の作では怪奇さを強調したような快作をものにして注目された。しかし、鉄則さん既に亡く、陽子さん高齢で筆を置いており、恵介さんも転業してしまって、奥瀬家のこけしが作られていないのが何とも寂しい。友の会の旅行で訪ねた時の元気な恵介さんの笑顔が懐かしい。復活を期待したい。
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