第469夜:秀顯さんの岩太郎写し(名古屋こけし会頒布)
今月の12日に名古屋こけし会の7月例会が開催された。その頃は未だ全国的に新型コロナウィルスの感染者数は落ち着いている状態であり、東京こけし友の会の7月例会も開催の予定で準備を進めていた。その後の惨状は周知の通り。今となっては、東京も名古屋もとても例会の開催は出来ないような状況になってしまった。この名古屋の7月例会では、大沼秀顯さんの岩太郎写しの頒布が決まっており、頒布会員になっている国恵にも後日、この頒布こけし2種が送られて来た。友の会での初頒布後の2作目であり、それを並べて見比べるのも楽しいものである。今夜は、その名古屋頒布こけしの紹介である。口絵写真はその表情である。
こちらがその2本のこけしである。右が友の会頒布(R2.2月)、左は今回の名古屋こけし会頒布品(R2.7月)である。友の会頒布では木地の仕上げが「トクサ仕上げ」と「紙やすり仕上げ」の2種類があったが、名古屋では発色の良い紙やすり仕上げで作られたとのこと。そのため右の作も紙やすり仕上げを並べてみた。友の会の頒布以降も「原」こけしは秀顯さん宅に預けており、今回の作は更にみがきをかけたものと言えるだろう。いずれも「原」に忠実な写しなので大きな変化はないようだ。木地では頭の蕪型が今回の方がよりシャープに出来上がっているようだ。
頭と顔を見てみよう。今回作は面描が手馴れて、描写がやや大きめなっている。眉・目の描線にはアクセントがしっかり出ており精悍な感じがする。完成度は上がっていると言えるだろう。比べると右の初作では形の詰めが甘く筆もおとなしいが、それが却って初作の初々しさ、古雅な雰囲気を醸し出しているとも言えるだろう。両作とも秀作であることに違いは無く好みで選んだら良いと思う。
今回の名古屋頒布の2本である。頒布では6寸の原寸の他に8寸のもの(右)も作られた。木地形態は「原」をそのまま8寸に拡大し、そこに元村岩太郎の描彩を施したものである。岩太郎かと言われるこけしは、本作の「原」こけし以外にも数本知られているが、いずれも6寸前後のもので、大寸物は元村岩太郎の一番大きなもの(8寸8分)だけである。大寸物の岩太郎こけしがどのようなものであったかは興味のあるところであり、本作のような試みは面白いと思う。これからも挑戦して貰いたいものである。
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