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第475夜:熊谷仁奈さんの木地挽物

Nina_futa_meruhen 仙台の熊谷仁奈さんから最新作の蓋付入れ物が送られてきた。頸椎ヘルニアを患って、そのリハビリ中の作品とのことであった。そのため本人的には内部の刳り抜きが不十分なのでと恐縮していたが、白木地の胴にはビリ鉋を使ったザラ挽きで模様を付け、品格のある作品に仕上がっている。しかも、大きく刳り抜いた中には赤ダルマが1個入っている。木地挽物が好きな国恵には嬉しい貴重な一品であった。そこで、これまで折々に作ってくれた仁奈さんの木地挽物を紹介したいと思う。口絵写真は、蓋付入れ物を斜め上から見たところである。

熊谷仁奈さんを知ったのは、国恵が頻繁に産地訪問をしていた頃で、もう10年程前になるだろうか。当時仁奈さんは青葉こけし会の会員でこけし愛好家の一人であった。仙台在住ということで現地に詳しく、度々工人訪問の案内をして頂いた。第880夜の森谷和男さん訪問の折も大変お世話になった。仁奈さんは絵が上手く、こけしの絵付け展で優勝したこともある。また、カメラやビデオの撮影にも秀でており、動画を編集してネットで公開するなども手掛けていた。こけしに関しては絵付けから始めて、次第に木地挽きにも興味があったようである。その後仁奈さんは近くの小笠原義雄さん宅をしばしば訪ねるようになり、自宅にロクロを据えて木地挽きやこけし作りを始めるようになった。当初は、小笠原さんの正式な弟子とは認められていなかったようで苦労されたようであるが、小笠原さんから木地挽きの技術と遠刈田系の伝統を受け継いでいることは間違いない。昨年、ようやく正式な弟子と認められ、地道に木地の技術を磨き、さらに道具の製作にも意欲的に取り組んでいる。

Nina_hyotan

こちらは最初に頂いた瓢箪(左)と姫ダルマ(右:2014.11.25)である。最初は得意な絵心を活かして瓢箪などに絵付けをしていた。その後、自身が挽いた木地に描彩を行うようになった。姫ダルマの絵柄は、瓢箪の上部に描かれた顔そのもので、瓢箪の下部には赤ダルマが描かれている。

Nina_meruhen

こちら左は遠刈田のこげす型のこけし(2016.10.27)。胴模様は蝶と虫取り網、赤いラインの入った帽子を被り、伝統性は無いがメルヘンチックで竹久夢二を思わせる小品である。右は蓋付入れ物(2016.11.6)、蓋の取っ手にはこけしの顔が描かれている。胴には大きな蓮の花が描かれ、こちらもメルヘンチックな雰囲気に溢れている。

Nina_kawa_iro

こちらは胴に木の皮を残した蓋付入れ物。こちらも蓋の取っ手にこけしの顔が描かれているほか、蓋の上面にはビリ鉋の赤い模様が一回りしている。胴模様は遠刈田の伝統的な桜崩しを描いている。

Nina_kawa_ironashi

こちらも胴に木の皮を残した蓋付入れ物(2018.7.27)。胴には模様を入れず、白木地と木の皮のコントラストがシンプルで美しい。蓋の取っ手も白でこけしの顔は描かれていない。なお、本品は蓋が胴体に吸い付くように嵌り、写真右のように取っ手を持つとそのまま持ちあげることができる。蓋は横に倒すと簡単に開けることができる。また、中には白木地のままの独楽が1個入っている。これは嬉しい!

Nina_shiro_daruma

こちらが今回の作品。これも蓋付の入れ物で、胴は白木地で中央部には鉋のロクロ溝を入れ、その上下に入れたビリ鉋のザラ挽きが良い模様になっている。蓋の取っ手はこけしの顔であるが首が無く、頭が直接蓋にくっ付いている。なお、中には赤ダルマが1個入っている。何とも嬉しい心遣いである。


昨今、若手の工人が増えてきているのは嬉しいことであるが、描彩が中心で木地挽きにはあまり関心がないようである。小笠原さんは木地挽きの達人。仁奈さんにはこけしは勿論であるが、木地挽きの技も追及して頂きたいと願っている。

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コメント

私は、大崎市古川在住です。
熊谷仁奈さんを取り上げてくださり、ありがとうございます。
熊谷さんは、熱心に色々なものに取り組み、私も陰ながら応援しております。
小笠原さんとの師弟関係についても大変心配しましたが、昨年5月に正式に小笠原さんの弟子として認められましたことは、国府田さんもご存知のことと思っております。
文中、明確な記載がなされていませんでしたのでコメントを書いた次第です。
今後ともよろしくお願い申し上げます。

大関淳一様
コメントありがとうございます。
また、小笠原さんの弟子の件、フォローして頂き恐縮です。
仁奈さんが気兼ねなくこけしや木地挽物を作れるようになったことは何よりも嬉しいことです。
これからも仁奈さんの作品を応援していきましょう。

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