第473夜:もんぺこけし(阿部常吉?)
もんぺこけしは純粋な伝統こけしではないかも知れないが、いかにも時代性を表しているようで好きなこけしである。もんぺこけしは今でも作られることはあるだろうが、もんぺと言えば戦前(特に戦中)の女性のはき物という意識が強く、やはり戦前のこけしが対象となる。先月末のヤフオクに戦前のもんぺこけしが出品されたので頑張って入手した。阿部常吉作として出品されていたものであるが、一側目の面描は常吉こけしでは見たことが無く、手元に届いてからも文献等を調べたが常吉こけしで同様の描彩のものは見つからなかった。今夜はそのこけしを紹介しよう。口絵写真は、一側目の表情である。
こちらがそのこけしである。大きさは6寸5分。頭に髷を結い、胴が縊れたもんぺこけしである。頭はきついが回すことが出来、胴への嵌め込みか差し込みであろう。ヤフオクの出品解説に、はっきり「阿部常吉」とあったので出品者に訪ねたところ、栃木県の骨董市で入手されたもので、骨董商の方がこけしに詳しい方で阿部常吉のこけしだと言っていたとのこと。
胴底は鋸の切りっ放しで書き込みなどは無い。胴下部のもんぺ模様などは確かに阿部常吉や進矢が戦後に良く作った子守りこけし等の衣装を連想させる。
問題は面描である。何故、一側目で描いたのであろうか。通常作る普通の常吉こけしとは別物という意識があったからであろうか。秋保の庄七も戦前の新型と言われる青頭のこけしにはパッチリとした目を描いている。しかし、この常吉の面描を見ると、かなり描き慣れている様子が伺われる。このような一側目のこけしが有る程度作られていたのであろうか…。そもそも本当に常吉作なのであろうか? 常吉で無いとすれば誰の作なのであろうか? 現時点では疑問の残るこけしである…。
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