第472夜:美品の吉太郎
小林吉太郎のこけしは好きなこけしの内の1つである。こけしの文献を読んでその魅力に取りつかれ、ヤフオク等の古品市場で入手を試みた。同じ古品でもより古いものほど良作が多く、それらは当然それなりの価格が付き、入手を困難にしていた。数年前にヤフオクに出た正末昭和の美品の中にも吉太郎があったが、小品ものにも拘わらず相当の高値になっていた。吉太郎こけしの中で特に印象に残っているものがある。小林清次郎の復元でも有名になった都築コレクションの吉太郎(尺7分)である。小頭で胴が長く、桐材に赤と黄緑色で描かれた胴模様が印象的なこけしである。先日ヤフオクに出品された吉太郎は、先ずその保存の良さに目を奪われたが、その形態と描彩が都築コレクションの吉太郎を彷彿させるものであった。そのこけしを入手したい気持ちが一気に高まり5人による争奪戦を制して、コレクションに加えることが出来たのはラッキーだった。今夜はその吉太郎を紹介しよう。口絵写真はその表情である。
こちらがその吉太郎である。大きさは1尺。材料はイタヤ。頭は小振りでやや太めの長い胴を付けている。やや小さいが、都築コレクションの吉太郎(上写真の右)とほぼ同様の形態である。胴上下には赤と緑で多重のロクロ線を配しているが、都築コレとは様式はやや異なる。大きな花冠を被った花模様も同様であるが、小花の数がやや異なる。頭の形は都築コレの方がやや横広気味で眉・目の面描もゆったり描かれている。本作の面描は描線は細いが筆には勢いがあり、眉・目・鼻が中央に寄って集中度の強い良い表情をしている。都築コレは昭和14年頃、本作はそれよりやや後の15年頃と思われ、晩年作に近い作にしてはしっかりしたこけしである。
「木の花(第15号)」では『連載覚書』に小林吉太郎を取り上げているが、その中の⑮尺6寸の解説では『この頃は明らかに電力による旋盤で挽いており、肩の所に、塗料のつけすぎと回転が早いためロクロ線を縦に雨が降ったような線がある。』とある。上の写真の左が、塗料(緑)の雨降りであり、右では胴底の中心に旋盤の丸跡が付いているのが分る。なお、胴底は斜めに切れており、そのままでは立たせることはできない状態である。
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