第485夜:こちらは習作(鈴木征一)
前回の大沼正人と一緒に入手した18本こけしの中に、鈴木征一のこけしが入っていた。ヤフオクの出品写真の中に、この征一こけしの胴底の写真が載っており、そこには「51.8.2 鈴木征一 練習中のもの」とある。征一は昭和47年5月から、奥山庫治について木地修業、5年間木地下を挽いて昭和52年5月に独立、昭和53年頃より自身のこけしを世に出したとある。(kokeshi wikiより)。征一の初期のこけしとしては、千夜一夜(1)の第888夜に昭和52年7月の作を掲載している。どの時点のこけしを征一の「初作」とするかは定かではないが、独立した52年5月とするのは一つの考え方であろう。それ以前の主に木地下を挽いていた頃にも練習でこけしは作っていたであろうし、そんな中の1本が今回のこけしと言えるだろう。練習中の作ということで「習作」とした。「初作」は一応作品としては完成品であるが、「習作」は未だ完成品とは言えないので、「初作」とはまた違った観点から見なければいけないのだろう。
こちらがその習作こけしである。大きさは6寸3分。縦長のやや大き目な頭、胴はやや細めの直胴で肩の山は高い。胴の重ね菊模様は小振りの横菊が密に連なっている。面描は手慣れておらず、眉毛にもぎこちなさが残っているが、中央に寄った目・鼻・口は纏まっており、無垢な瞳は微かに笑みを浮かべているようにも見える。このこけしでは「初々しさ」というより「あどけなさ」が見どころになっているようだ。
昭和52年7月(左)と並べてみた。左作では署名もしており(下写真を参照)、右の習作と比べて、筆致も伸びて精悍な若々しさを感じるこけしになっている。このように、初期のこけしは変化が激しいこともあり、その推移を見て行くのもコレクションの楽しみである。
上2本の胴底の署名と書き込み。
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