第483夜:鉄則の幸兵衛型を遡る
国恵がこけし収集を始めた昭和40年代の後半、既に第二次こけしブームが盛り上がりを見せており、津軽系の盛秀太郎のこけしは雲の上の存在、その弟子の奥瀬鉄則のこけしも垂涎の的であった。しかし、こけし初心者にとって当時の盛秀/鉄則のこけしはコレクションにぜひ入れたいものであったのも事実であった。ようやく1本の鉄則こけしを入手するも、鉄則は色々な種類のこけしを作っており、渇望感は増すばかりであった。鉄則こけしには盛秀型と幸兵衛型の二種類があることを知り、幸兵衛型は盛秀型ほど人気は高くなく入手もし易いとの思いから、幸兵衛型を中心に鉄則こけしを集めることにした。幸兵衛型も集め出すと、数種類あることが分かり、更に年代変化もあることから次第に初期の幸兵衛型に目を向けるようになった。「盛秀一家のこけし辞典」などから、鉄則の最初期の幸兵衛型は通称「ロボット」と呼ばれる目の大きい愛らしいこけしであることが分かった。そのロボットは新型っぽい描彩のものであるが、人気が高く未だに入手するに至っていない。前置きが長くなったが、先日ヤフオクに、そのロボットによく似た目をした鉄則のこけしが出ていた。よく観察するとロボットではないが、手持ちの中では最も古い鉄則幸兵衛型とロボットの間にあたるこけしに見えてきた。そこで、急遽入札に参加すると価格は高騰することなく、ほぼ適正と思われる価格で手に入れることができた。今夜はそのこけしを紹介しよう。口絵写真は、その表情である。
鉄則最初期の幸兵衛型は手元に無いので、「盛秀一家のこけし辞典(2)」から写真をお借りする。
こちらがその「ロボット」と呼ばれるこけしの写真である。製作時期は昭和34年と思われる。髷付きの頭で頭の長さは短めである。鬢は短く、クリクリの大きな目で愛らしい。頭と作り付の直胴で上下に赤、紫、緑、赤の太いロクロ線が入る。胴中央には大きな牡丹の花が描かれる。可憐な表情と濃厚な胴模様が印象的なこけしである。
さて、今回のこけし(右)を昭和36年の幸兵衛型(左)と並べてみた。木地形態はほぼ一緒と言ってよいだろう。前述のロボットより細線が増えた胴上下のロクロ線と牡丹模様もほぼ同じである。違うのは顔の表情だけなのである。
顔の部分を改めて比べてみよう。髷を含めて共に縦長の頭形であるが、左の方がやや横に膨らんでいるようだ。長い鬢もほほ同じで、違うのは面描だけである。左に比べて、面描は顔の中央に寄っており、眉目の湾曲が大きく眼点も大きい。この大きな眼点がロボットを連想させるのであろう。幸兵衛型最初期のロボットから、左の気品のある初期幸兵衛型に移る過渡期のものと思われ、昭和35年~36年頃の作であろう。
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