第495夜:斉司の初期作(戦前)
昨夜は桜井昭二の戦前作を紹介したが、今夜は同じ鳴子系の岡崎斉司の初期作である。斉司は大正15年生まれなので昭和ではないが、昭二と同世代と言っても良いだろう。斉司は昭和15年、高等小学校を卒業してから父斎について木地修業を始めるが、描彩は小学校の時から始めていたと言う。従って、木地挽きに慣れれば、こけしを作ること自体はそれほど難しくはなかったのであろう。深澤要が昭和16年に鳴子を訪れた際には、その作品が斎のこけしと一緒に店の棚に並んでいたと「こけし追及」には書かれている。本作は、胴底の張り紙で久松旧蔵、昭和15年との記載がある。口絵写真はその表情である。
こちらが、そのこけしである。大きさは6寸1分。胴底の張り紙から久松旧蔵とあるが、久松著「こけしの世界」に本作の掲載は無い。しかし、同手の作が「愛玩鼓楽」に掲載されており、昭和15年頃との解説がある。やや縦長の蕪頭に、裾にかけて広がった胴は均整がとれて美しい。前髪の両端から伸びた3筆の鬢は長く、眉・目・鼻の筆致は溌溂としている。斎譲りの眼点が大きい瞳は甘さが無く、凛々しさを感じさせる。2筆の先が離れた楓模様は古い様式を思わせ、味わい深い。こけしとしての完成度が高く、これが作り始めの15歳の少年の作とはとても思えない。
第362夜で紹介した戦前作(左)と並べてみた。たかだか数年の違いと思われるが、その作風の変化の激しさに驚かされる。木地形態、描彩ともに弱々しくなっており、戦況が悪化する中で、こけしを作る気持ちにも大きな変化があったのであろうと推測される。
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