第496夜:面長の優しい忠こけし
正月まであと2日、東京での新型コロナ新規感染者数は900台半ばとなっている。年末年始は検査数も減るので1000の大台突破は来年になってからか…。さて、年末の鳴子古品シリーズの三日目。今夜は秋山忠のこけしを取り上げる。忠のこけしというと第491夜でも紹介したように角のある眉と三角形の下目が特徴的な鋭角的な表情のこけしが頭に浮かぶ。そんな中にあって、国恵志堂には頭が縦長で目の位置も高く明るく優しい表情の忠こけしがあった。そのこけしは偶々出来たものかと思っていたが、それに類するこけしをヤフオクで入手したので紹介したい。口絵写真はその表情である。
こちらがそのこけしである。大きさは8寸3分。胴底には「昭15」の書き込みがある。頭は縦長で胴もそれほど太くなく、一般的な忠のこけしとはやや印象の異なるこけしである。胴は下部に鉋溝が入り、そこに菱菊を描いた典型的な忠こけしである。一方で、面描を見てみると、忠こけしの大きな特徴である前髪が下がって、正面から見ると2筆の後ろ髪と赤い水引まで良く見える下目こけしにはなっていない。前髪が上がり、それに合わせて眉目も顔に中央辺りに描かれている。また、眉と上瞼の描線も大きく湾曲しているがそれほど角張っておらず、そのためか表情に優しさが感じられる。
手持ちの同種のこけし(右)と並べてみた。右のこけしでは、本稿の特徴が更に強く出ており、本作よりも後の作と思われる。また、本作では頭頂部の後ろ髪の2筆がくっ付いて1筆描きのようになっており、前髪との接点に細い黒髪が描かれている。これは他には見かけたことが無く、珍しい様式になっている。
こちらが、頭頂部の描彩様式の違いである。
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