第492夜:精助の大寸こけし
師走も中日を過ぎ、お正月まであと2週間余りとなったが、コロナ感染は依然増加傾向を続け、年末年始2週間のGotoトラベルも一時中止が決まった。今年1年のこけし界を振り返えると、やはりコロナ禍に振り回された1年であったと言えるだろう。こけしのイベントは若い愛好家を中心に多くの人が集まって「密」を作る場となることが避けられず、主要なイベントは軒並み中止となってしまった。友の会の例会も3月から12月まで中止が続いており、10月からは「オンライン例会」が開かれている。来年1月の新年例会は開催の方向で、色々な対策を検討しているが、どうなるであろうか…。さて、弥治郎系の髙橋精助のこけしは、その辛口の佇まいが気に入っており、入手の機会を伺っていた。しかし精助のこけしは昭和14~16年の復活時のこけしが小寸のペッケを中心に少知られているだけで、市場に出てくることもあまり無い。その精助の大寸こけしが先週ヤフオクに出品され、日曜日に締め切りを迎えた。程よく古色が付いているが退色は見られず状態の良いこけしであったが、最低価が高かったためか応札者が現れず、無競争で入手することが出来た。今夜はそのこけしを紹介しよう。口絵写真は、その精助こけしの表情である。
こちらが、その精助のこけしである。大きさは尺。胴底に鉛筆で「七ヶ宿横川 高橋精助作 昭和14年」の書き込みがある。頭は角ばって横に長い平頭である。胴は首下に僅かな段があり(この部分は赤く塗られているため襟巻きのようにも見える)、そこから微かに広がりながら底に向かっている。畳付きにも微かな段が付いて広がっている。胴を撫でてみると、ロクロ線に沿って微かな凹凸が感じられ、磨き上げられてすべすべの木地が多い中、これが時代を感じさせて何とも心地良い。唯一、欲を言えば、頭と胴のバランスから、頭がもう少し大きければ、更なる迫力を感じるこけしになったと思われる。胴のロクロ線は「精助カラー」とでも言える、赤と紫で構成され、その間の地の部分には黄色が塗られていたと思われる。
頭頂部と胴底である。頭頂部のロクロ線は、こちらも紫と赤を中心に外側を黒で締め、その周りに手描きの髪を添えている。額の飾りは小さい一筆の赤点のみで、そのシンプルさも良い。一本一本描いたような鬢の上部には赤2筆の鬢飾り、鬢の後ろには「3」の字状の耳を描き、耳の穴まで入れているのが心憎い。眉目の描線は細いがよく伸びており、小さな眼点が鋭い視線で迫ってくる。凛として格調の高さを感じさせる表情である。鼻は撥鼻で、赤2筆の口は小さく、淡く入れられた頬紅は、筆ではなく指先で塗ったのではないかと思われ、きつめの表情に潤いを与えている。
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